経済・社会

2023.09.05 09:30

6カ国が新加盟し拡大するBRICS、G7の脅威になるか

安井克至
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BRICS諸国の経済は、G7やその他の先進国よりも速いペースで成長している。そここそが、西欧によって確立された世界経済秩序を脅かす存在として特徴づけられるBRICSを、欧米諸国が警戒する理由の核心だ。しかし、新規に加盟する6国は必ずしもそうした特徴にあてはまらない。むしろこれらの国々は、過去数年にわたって経済の低迷に悩まされてきた。具体的には、2018~19年のアルゼンチン不況、2017年のエジプト通貨危機。さらには2015、16、19年にイラン、アラブ首長国連邦、サウジアラビアに深刻な打撃を与えた原油市場の変動が挙げられる。

前途多難な拡大?

世界金融危機が終わったあと、G7諸国のGDP成長率は年平均2%程度で推移している(新型コロナウイルス感染症のパンデミックが猛威を振るった2020年は例外的にマイナス2%だったが、2021年のプラス10%の成長によって補填された)。

一方、BRICS中核国は2010年代に年平均8.4%の経済成長をとげ、2021年にはプラス20%、2022年にはプラス4%を記録した。しかし、BRICS新規加盟諸国は、2010年以降の6年間でGDPがマイナス成長となっており、どのような基準で新規加盟国が選定されたのか疑問視されている。

Aljazeera(アルジャジーラ)のインタビューに応じた専門家によれば、先述のように新規加盟国のいくつかは産油国であり、現在のBRICSメンバーのほとんどが非産油国であることも考慮されたようだ。だが、新規加盟国のあいだに共通点はほとんどない。

加盟を申請した22カ国からこれらの国々が選ばれたもう1つの要因は、インドが土壇場で加盟基準の策定に介入したために、8月23日の夜に新規加盟国リストに入れ替わりが生じ、したがって選出された新メンバーの6カ国は妥協の産物であるという可能性だ。

新規加盟をめぐる緊迫した交渉は、BRICSメンバー間の見解の相違を改めて浮き彫りにするものだ。ブロック内のコンセンサスの形成は、今回の拡大後、さらに困難になることが予想される。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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