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2023.09.06 12:30

青い空と海 「飛び地」のサテライトオフィスではたして生産性は上がるのか

大柏 真佑実

青い空、水平線が見える海、緑溢れる森ーー。仕事をするなら自然の中でとばかりに、近年、本社から離れた地方や郊外の飛び地にサテライトオフィスを構える企業が増えている。総務省が2022年10月に発表した調査では、地方公共団体が誘致あるいは関与した企業のサテライトオフィス開設数は、20年度末時点で916箇所。しかし翌21年度末時点では、約1.5倍の1348箇所まで急増している(※)。

こうした「飛び地」にオフィスを置くのは日本だけではなく、アメリカも同様だ。飛び地のサテライトオフィス(以下、飛び地オフィス)でのオフサイトミーティングを企画・運営するSaaS「Retreat」(創業者は山田 俊輔氏)が成長。Uberに初期投資をするなど、これまで7社のユニコーン企業に投資したジェイソン・カラカニス氏や、米国トップクラスのVC、アンドリーセン・ホロウィッツが出資するなど、注目度の高さがうかがえる。

はたして、自然の中にある飛び地オフィスで仕事は捗るのか。

離島からメトロバーブまで 国内外の飛び地オフィス

まず国内外には実際、どんな飛び地オフィスが存在するのか、いくつかの事例を見ていこう。

「森の書斎」で生産性は向上するのか

「森の書斎」と称して、2023年7月、軽井沢にリゾートオフィスをオープンさせたのはIT企業アステリアだ。カルチュア・コンビニエンス・クラブが新たに開発した複合施設「Karuizawa Commongrounds」の一角に位置し、自然を感じながら仕事に集中できるオフィスに、視界230度の「ハーフムーンシアター」などの最新映像機材を整備。パートナー企業や地域の情報発信拠点としても、運用されている。

離島の大自然を感じて、働き・遊び・混ざり合う

「島ぜんたいがワークスペース」を標榜し、2023年6月、島根県隠岐諸島の西ノ島で、企業や個人を対象に営業を開始したワーケーション・サービスがある。就職などのマッチングDX事業を展開するポートの子会社、オルタナティブ・ポートが運営する「Oki Work」だ。同サービスでは、旅費と宿泊費、テレワークオフィスの使用料金を含めた中長期滞在型のパッケージを提供。利用者は島の自然を体いっぱいに感じながら、働き、遊び、島民と交流できるという。

青い空と海を臨むオフィスで、東京を超える実績を出す

営業の新規開拓件数で東京オフィスを上回る実績を見せたのが、セールスフォース・ジャパンが2015年10月、和歌山県に開設した白浜オフィスだ。青い空と海が眼前に広がるオフィスには、電話やメール、チャットなどを用いて顧客にアプローチする内勤営業の社員の一部が勤務。社員は都会の喧騒や通勤ラッシュなど、ストレスが少ない環境で働くことによって、生産性が高まった。地元の小中学校でプログラミングを教えるなど、社員は地域の活動にも積極的に参加。国内における飛び地オフィスの代表例として知られている。

組織のカルチャーに浸る、東京ドーム6.5個分の広大な施設

カリフォルニア州中部のスコッツ・バレーにある75エーカー(東京ドーム6.5個分)の広大な敷地に建てられたリトリート施設「1440 Multiversity」。宿泊施設やメディテーションセンター、トレイル、焚き火場などがあり、企業や個人を対象にリーダーシップからアートまで、多彩なイベントを開催している。中でも米セールスフォースは過去、コロナ禍を経てリモートワークが進むなか、同社が「トレイルブレイザー・ランチ」と呼ぶ、社員がコミュニケーションやコラボレーションをするために集まる場所として活用。同社の文化を共有し、強化することに役立てていた。
ホームページより

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文=大柏 真佑実

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