EC業界の革命ツール「Yieldify」 14億円をソフトバンクらから調達

Yieldify創業者Jay Radiaと Meelan Radiaの兄弟 (Photo via Yieldify)

もしもECサイトがユーザーの心の中を見透せる力を備えたら、より多くの買い物をさせることが可能になるだろう。

Eコマース業界を席巻中の予測分析ソフトウェアは、それを可能にするとしている。今回、この分野の巨大企業2社が最先端の技術を持つスタートアップに出資した。

Google VentureとSoftbankは、ロンドンを拠点とする企業「Yieldify」に1150万ドル(約14億円)のシリーズA出資を行った。Yieldifyを創業したのはJay Radiaと Meelan Radiaの兄弟。これまでに何と13もの会社を立ち上げている。二人はクライアントの事例に合わせてYieldifyのサービスを導入することで、979%の投資回収率をあげられると胸を張っている。

Yieldifyの収益モデルは、他の多くのSaaS企業のようなサブスクリプション型ではなく、売上に応じて一定割合の成功報酬を得る方式だ。コンバージョンの最適化は、10年以上も前からOmnitureのような大手企業が提供しているが、最近ではA/Bテストを取り入れた新たな試みが行われ、ユーザーごとの趣向に合わせてページに誘導し、よりパーソナルな買い物体験を提供するようになってきている。

Yieldifyの場合、買い物客がカートに商品を入れたままログオフしそうになると、クーポンを提示してカート離脱を防ぐなど、ユーザー個別の行動に合わせたマーケティング対策を取っている。

ビッグデータと行動科学を組み合わせ、ユーザーごとに最適な提案を行う手法を「ハイパー・パーソナライゼーション」などと呼ぶ。こうした取り組みによって、ユーザーのニーズをより正確に読み取り、最適な商品カテゴリーへと誘導し、満足度の高い買い物体験の提供が可能となるのだ。

現在、ECサイトを運営する1000社以上がYieldifyのサービスを利用し、顧客には、Marks & SpencerやFrench Connectionなどの大手が名を連ねる。Yieldifyの売上は前年から480%増え、ロンドンで最も早く成長しているSaaS企業となっている。

2013年6月にスタートしたYieldifyは、同年後半から黒字化し、昨年はニューヨークにオフィスを立ち上げた。シードラウンドでは、複数のベンチャーキャピタルが名乗りを上げたが、最終的にはロンドンを拠点とするHoxton VenturesとIndex VenturesのRobin Kleinから出資を受けている。そして今年に入り、SoftbankとGoogleからシリーズAの出資を受けた。

「Yieldifyはここ1年間で十分利益を出しているので、本来は新しいキャッシュを必要としていない」と投資家の一人は話す。それでもGoogle VenturesとSoftbankから出資を受けたのは、より優秀な人材を獲得するためだ。Yieldifyは今後もデータサイエンティストを増やす予定だ。

今回、Softbankによる出資を実行したのは、Joe Medved率いるニューヨークを拠点とする同社のベンチャーキャピタル部門。一方のGoogle Venturesにとってはこれがイギリスにおける最初の大型案件で、ゼネラルパートナーのAvid Laziradeh Dugganがリードした。

文=パーミー・オルソン(Forbes)/ 編集=上田裕資

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