欧州

2023.09.07 09:00

ウクライナ、F-16戦闘機にハープーンミサイル搭載で艦船攻撃も可能に

安井克至
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Leonard Zhukovsky / Shutterstock.com

ウクライナに今後供与されるデンマーク、オランダ、ノルウェーの米国製F-16戦闘機はウクライナ空軍の防空と攻撃の能力を大幅に向上させるはずだ。

だが、F-16を手に入れることでウクライナ空軍は初めて艦船を攻撃する能力も得ることになるかもしれない。ノルウェーのF-16は、2000年代初めにノルウェー空軍が老朽化したミサイルを徐々に退役させるまで自国製の対艦ミサイル「ペンギン」を搭載していた。

ノルウェーのF-16は包括的な近代化改修プログラムの過程でペンギンとの互換性を失ったという事実ではない説が広まっているが、ノルウェーが供与するF-16がウクライナで再びペンギンを搭載するということはなさそうだ。

ノルウェーは2021年にウクライナにペンギンを供与したという未確認情報もある。

だが、ウクライナ空軍がロシア軍の黒海艦隊を攻撃したければ、赤外線で誘導される射程約48キロのペンギンに代わるものがある。米国製の対艦ミサイル「ハープーン」だ。ウクライナはすでにハープーンを供与されており、最小限の改造でF-16に搭載できる。

ハープーンの重量はペンギンのおおよそ倍の約690キロだ。射程は少なくとも120kmで、モデルによってはレーダーシーカー(目標捜索装置)かレーダーとGPSを組み合わせたものを搭載している。

F-16にハープーンを搭載している空軍はわずかだが、その最たる例となるのが台湾だ。台湾空軍(中華民国空軍)はF-16の初期モデルのA/B型と最新のV型に、初代ハープーンのブロックIとGPS誘導機能を追加した次世代モデルのブロックIIを搭載している。戦艦攻撃能力の高いこれらのF-16は、台湾空軍が中国の艦隊を撃破するのに中心的な役割を担う。

1990年代に製造されたF-16ブロック50/52にはハードウェアとソフトウェアがプリインストールされており、さまざまなモードで発射できる。あるモードではミサイルを特定の方位に飛ばすものの、標的を発見するのは弾薬のシーカーに頼る。別のモードではミサイルに標的の方角と距離を伝送して命中率を高める。

だがソフトウエアに少し手を加え、いわゆる「ハープーン・インターフェース・アダプター・キット」と呼ばれる、ミサイルがぶら下がっているのと同じパイロンに収まる1980年代に製造された制御ボックスを取りつけるだけで、どのF-16にもハープーンを搭載できる。

ウクライナはすでにハープーンを保有している。デンマークやオランダ、スペイン、英国、米国が2022年初めからウクライナに供与した。ウクライナ海軍はトラックのランチャーからブロックIとブロックIIを発射し、2022年6月にはロシア軍の補給船ヴァシリーベクを撃沈した。

地上発射のハープーンと空中発射のハープーンに大きな違いはない。地上発射型にはロケットブースターがあるが、空中発射型は機体から発射されるためロケットブースターを必要としない。

ウクライナ空軍は、米国が喜んで提供するであろうインターフェースキットを取りつけ、保有するハープーンからブースターを外すことで、供与されることになっている60機以上のF-16の一部またはすべてを戦艦攻撃プラットフォームに変えることができる。ハープーンを発射するF-16は、黒海全域のロシア艦船を脅かすことができるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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