2023.08.23

先進運転支援システムは今後30年間で3700万件の事故を防ぐ

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現在多くの自動車に搭載されている先進運転支援システム(ADAS)は、センサーやカメラが潜在的な危険を検知してドライバーに警告したり、自動で車両の動きを制御して安全を確保したりする技術だ。ドライバーを補助するこの安全技術によって、米国では今後30年間で推計3700万件の交通事故が未然に防がれ、1400万人の負傷者と25万人近い死者を出さずに済むとの研究結果が明らかになった。

すなわち、ADASがなければ起きたであろう交通事故と負傷者の約16%、死者の22%が予防できる計算になる。

これらは、全米自動車協会(AAA)交通安全財団が17日に発表した、運転支援システムによる人命救助の可能性を予測した最新研究の主な結果である。

AAA財団のデービッド・ヤン理事長兼事務局長は「新興技術に関するAAA財団の最新の研究結果は、ADASには交通安全を変革する可能性があることを示唆している」と述べた。

ADASがもたらす将来的な安全上のメリットは、消費者のシステム導入・利用状況や今後の技術発展などさまざまな要因に左右される。しかし、AAA財団の報告書「不確実な将来における部分的な車両自動化技術についての安全上の利点の検証」によると、ADASによって今後数年間で多くの命が救われる可能性がある一方、現在の傾向が続くなら、やはり多くの命が路上で失われることになるだろうという。

ADASは、まだ実用化に至っていない完全自動運転と異なり、車両の「セーフティーネット」を形成する働きをする。その安全上のメリットは、システムの種類や使用方法によりけりだ。

たとえば、前方の車両や歩行者などとの衝突の危険を検知して警告を発したり、自動的にブレーキを作動させて衝突回避や衝撃緩和を図る自動緊急ブレーキシステムについては、AAAの技術チームが昨年、自転車や横から来る車両には効果が低いことを確認した。

ドライバーが設定した前走車との車間距離を維持して追従走行するACC(アダプティブクルーズコントロール)技術を評価したAAA財団の先行研究では、正しく使用するための適切な知識が当初ドライバーに不足している恐れがあり、特にシステムの対応能力を超えた状況では誤用や不信感につながりかねないことが指摘されている。

一方で、ドライバーがシステムに触れる時間と度合いが増すにつれ、技術への理解度が上がり、より効果的にシステムを利用できるようになる可能性があるという。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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