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2023.08.11 10:30

人型ロボットも生成AIで進化、SF映画で描かれた未来は実現するか?

安井克至
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AIチャットボットが目もくらむほどの成果を上げているように感じられるのと比べると、私たち人間と物理的な空間を共有するロボットには、まったく進展がないように感じられる。いま起きている生成AIの波が、いまだに目新しいものとされているのは皮肉な話だ。なぜならロボット工学も、生成AIと同様の基礎技術の進歩を遂げており、歩き、話すロボットが、すでに十分に実現可能なレベルに達しているからだ。

中世の英国詩人チョーサーの文体で説得力ある文章を書けるチャットボットと、側溝にたまった落ち葉を掃除してくれるロボットの間に関連性を見いだすのは難しいかもしれない。言葉のニュアンスを理解する生成AIの能力によって、人間は常に明確な指示を送るよう気をつける必要がなくなり、より自然な言語でやりとりができるようになった。こうしたやりとりの容易さと、優れた画像認識能力は、現在のAI体験と「ロボット工学の可能性」の間にある、最も明白なつながりだ。

だが、そこにたどり着くまでの道のりは、まだ長いかもしれない。イーロン・マスクは、2050年までにはヒューマノイド(人間型)ロボットが全家庭に普及するというビジョンを示している。だが、たとえそうなったとしても、刃物を操ることはできるが、論理的思考力に限界があるおしゃべりなマシンがそばにいる家で、私たち人間が100%安心して暮らせる保証はない。そのマシンがイーロン・マスクによって作られたものだったら、より安心と思えるだろうか?

そうは思えないだろう。ロボット工学の未来について想像していると、空恐ろしく思えることもある。特に、テスラ・ボットが実際に鋭意開発されているのだからなおさらだ。さらにスペースXのウェブサイトによると、マスクは4万2000基の低軌道衛星によるネットワークを開発中だという。これは、単にそうした未来が楽しいと思ってやっているのだろうか、それとも、ロボットによる反乱する未来を企てているのだろうか? 

今のところ、このようなロボットが普及した未来の姿をイメージする上で助けになるのが、ボストン・ダイナミクスの動きだ。


「不気味」なロボット会社

グーグルの社是にはかつて「邪悪になるな(Don’t be evil)」という一節が掲げられていたが、これは2018年に取り下げられた。そう聞くと、確かに恐ろしくなってはこないだろうか? 

だが幸い、この社是を取り下げる1年前に、グーグルは、超不気味なロボット開発部門であるボストン・ダイナミクスをスピンアウトしていた(グーグルは同社を、2013年に買収して子会社にしていた)。邪悪さに対するグーグルの姿勢が変化してからも、同社がグーグルの傘下にあったなら、これは背筋が凍るようなニュースになっていたことだろう。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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