この拡大によって、欧州の戦略をめぐる地理的環境はNATOに有利な方向へと劇的に変わるだろう。バルト海をぐるりと囲むかたちでロシアに対する締め付けが強まることになるからだ。
トルコによるスウェーデンのNATO加盟容認は、両国首脳が10日、NATO首脳会議を前にリトアニアの首都ビリニュスで行った会談で決まった。NATOは声明で「スウェーデンとトルコはトルコの安全保障上の正当な懸念に対処するために緊密に連携している」と言及している。
2022年2月にロシアがウクライナに対する全面侵略を始めた数カ月後、フィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟を申請した。フィンランドの加盟はわりとスムーズに進んだが、スウェーデンに関してはクルド人武装勢力をかくまっているとトルコが問題視してきたため、進捗が滞っていた。
北大西洋条約では、NATOの新規加盟にはすべての加盟国(現在はフィンランドを含む31カ国)の批准が必要と定められている。トルコの同意を得るために、スウェーデン政府は対テロ法を微修正したほか、トルコの欧州連合(EU)加盟への支持も約束した。米国もトルコが求めてきたF16戦闘機の売却承認をちらつかせて、スウェーデンの加盟を後押ししてきた。
フィンランドの加盟によって、その現役兵2万4000人、軍用機100機、多数の艦船がNATOに加わった。スウェーデンが加盟すれば、さらに現役兵1万5000人、フィンランドとほぼ同規模の軍用機や艦船が加わることになる。
もっとも、NATOはすでに350万人規模の兵力を有するので、兵士の増加はそれほど重要ではない。それよりも重要なのは、地理的な変化だろう。フィンランドとスウェーデンの加盟によって、NATOの防衛範囲は約1300キロメートルにおよぶフィンランドとロシアの陸上国境沿いと、バルト海をほぼ取り囲むエリアに広がるからだ。
とくに重要なのはバルト海の囲い込みのほうだ。NATO加盟国で最も攻撃を受けやすいラトビア、リトアニア、エストニアの3カ国は、ロシアと、その飛び地であるカリーニングラードに挟まれたかたちになっている。米外交問題評議会(CFR)はリポートで「NATOはバルト3国を防衛するために、フィンランドとスウェーデンに基地を置く権利を必要とするのはほぼ確実」とする西側軍事アナリストの見方を紹介している。
フィンランドとスウェーデンの加盟によって、NATOはバルト3国の北方に多くの航空基地や港湾、補給線を確保できるようになる。これはつまり、3国がロシアの攻撃を受けた場合に、NATOは迅速な増援をしやすくなるということだ。
(forbes.com 原文)