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2023.06.16 16:30

800社利用の「ストックオプション」 国税見解を使いにくさ解消の契機に

露原直人

Daboost / Shutterstock.com

スタートアップを中心にビジネスのトレンドを、メールで隔週お届けしている「Forbes JAPAN Newsletter」。本連載では、その内容をピックアップして紹介します。

今回は、日本金融経済研究所の代表理事である馬渕磨理子さんによる「スタートアップ政策 馬渕磨理子はこう見る」コーナーから、6月11日の配信記事を掲載します。


スタートアップにとって、ストックオプション(SO)は人材確保で重要な制度です。

SOにはいくつか種類がありますが、近年注目されているのが「信託型SO」。従来は行使価額や付与対象者を事前に決める必要があり、それがネックでした。信託型は企業価値が高くない初期の段階に発行したSOをプールして、適時従業員に配布する仕組みです。入社時期に関係なく同等の価格で行使できるため、インセンティブが大きくなりやすいのが特徴です。

しかし国税庁から示された見解をめぐり、議論が起きています。これまで企業側は「株式売却時に譲渡益課税20%を支払えば良い」という認識でしたが、今回の見解によって追徴課税が発生するケースが出てくることになります。

信託型SOを導入しているのは、スタートアップだけでも約800社と数多く、それだけ企業にとって重要な制度であるため、大きな話題となりました。

ただ、国税の見解は改悪されたものではないですし、必ずしもスタートアップにとって逆風という訳でもありません。

実際、先日行われた自民党の「スタートアップ政策に関する小委員会」でもSOについて提言がありました。現状、SOに関する決議事項は株主総会で決まり、取締役会が1年以内にそれを実行しなければなりません。しかしそれは企業にとって負担が大きいため、撤廃すべきではないかという声が上がっています。また要件が複雑で使いにくいとされている税制適格SOについても、手続きの簡素化などが盛り込まれました。

冒頭で述べた、従来のSOの課題が、スタートアップ育成5カ年計画で解消されていくきっかけになったと言えるかもしれません。


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文=馬渕磨理子

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