2023.06.11 17:00

バリを愛した故・鹿島社長が夢見たリゾート、ラッフルズ・バリ

鈴木 奈央
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ビスーズ氏が大切にするのは、近代化の流れの中で失われかけた伝統や独自性、つまり「その土地らしさ」を、今の時代に即した形で守ること。

「インドネシアでは、70年代に観光客が急増したことで、地元の伝統を捨てて効率重視の品種が育てられるようになった。今の若いバリの人々の中は、こういった食材のことを全く知らない人もいる。地元の忘れられた伝統品種や食材に再びスポットライトを当てて、固有の文化を絶やさないようにすることが、ファインダイニングの役割であり、責任だ」とビスーズ氏は語る。
ガエタン・ビスーズ氏

ガエタン・ビスーズ氏


デザート「クニット・アッサム」の主原料であるターメリックとタマリンドはリゾートの敷地内の農園で育てられている。蜂蜜も、この日は農園で育てられている原種の蜂の蜂蜜が使われていた。


そんなビスーズ氏の姿勢は、同じフォーマットの巨大リゾートが増殖した時代に、ハワイの地元文化を取り入れたヴィラをつくるなど、その土地の固有の文化を建築で表現してきた鹿島氏の姿とも重なる。

このラッフルズ・バリは、伝統建築に基づいているだけでなく、普段からリゾートの施工を多く手がける鹿島建設がオーナーでもあるというだけあって、快適さのための日本の技術が遺憾なく発揮されている。引き出しやドアの開閉のスムースさ、スイッチなどを押した時の感覚など、きめ細かい部分までストレスフリーだ。

またエネルギー利用の最適化を図るマネジメントシステムが設置され、ガラス戸を開けるとセンサーが検知しエアコンを自動停止するなど、地球環境にも配慮した最先端の技術が使われている。日本の技術を使い、「その土地らしさ」を現代に生きた形に表現する建物ということができるだろう。

この土地への深い愛情を持って、地元の人が誇りに思える文化の発信拠点としてのリゾートを目指す。ドクターKAJIMAが残した「その土地をその土地らしく」の思いは、いまこのバリの地に根付き、花開こうとしている。

文=仲山 今日子

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