政治

2023.05.05 17:30

ロシア大統領府へのドローン攻撃、背後にいるのは誰か

安井克至

Getty Images

3日夜に2機のドローンがロシア大統領府(クレムリン)を攻撃したとロシアは主張している。プーチン大統領はその時不在だったが、ロシア当局はこの攻撃をウクライナによるプーチン大統領暗殺の試みだと非難した。ウクライナのゼレンスキー大統領はすぐに自国は関与していないと明言した。

「プーチン大統領やモスクワを攻撃しない。我々は自分たちの領土で戦っている。自国の村や都市を守っている」とゼレンスキー大統領は訪問先のフィンランドでメディアに語った。

多くの人が疑っているように、偽旗攻撃だったのだろうか。攻撃をとらえたとされる未確認の動画には、爆破前にドローンが宮殿のドームを通過する様子が映っている。ドローンは小型の固定翼タイプだ。この手のものはネットで販売されている中国製の工作キットで簡単に組み立てることができるため、アリババ・ドローンというニックネームがつけられており、ウクライナ軍が長距離攻撃でよく使っている。特に9500ドル(約127万円)のMugin-5をベースにした攻撃ドローンは、クリミアなどでの複数の攻撃で確認されている。また、ロシア軍も同じドローンを使用している。

飛行時間7時間のMugin-5の航続距離は数百マイルにおよぶため、どこからでも飛んでくる。ただし、正確な航続距離は燃料ではなく搭載された弾頭の重量によって異なる。

中国から輸入した部品で組み立てられていることから、仮に法医学的な検査が可能であったとしても今回のドローンがウクライナ人によるものなのか、あるいは多くの人が疑っているようにロシア政府の代理人によるものかはわからない。ドローン作戦の特徴として否認能力が挙げられ、ドローンがどこから来たか証明するのは往々にして困難、あるいは不可能だ。

おそらく偽旗説に対する最大の反論は、今回の攻撃がロシアに利益をもたらさないというものだろう。ある人は「彼らは何をするつもりなのか。残虐にウクライナに侵攻するのか」とツイッターに投稿した

ロシアはすでに弾道ミサイル「極超音速」ミサイル、巡航ミサイル、地上攻撃用に再利用されたS-300地対空ミサイル、数百機のイラン製攻撃ドローンなど、持てるものすべてをウクライナ攻撃に投入している。さらにエスカレートさせるという選択肢はほぼない。プーチン大統領はこれは戦争ではなく単なる「特別軍事作戦」だと主張し、本格的な動員に抵抗してきた。これまでの招集は十分困難なものだった。

ロシアはゼレンスキー大統領を狙った報復の可能性を示唆したが、侵攻当初最初からロシアはそうしている。

ウクライナによる攻撃、あるいは偽旗作戦とは別の可能性がある。
次ページ > 今後待ち受けているロシアの防空にとっての真の課題

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事