北米

2023.04.07 14:00

銀行危機の中、ビットコインは時価総額「14兆円」の上昇に

安井克至
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米国の銀行システムに対する信頼が揺らぐ中、ビットコインは、ここ数週間で急騰しており、JPモルガンはこの動きが「暗号資産の狂信者たちの長年の信念を裏づけた」と述べている。しかし、同銀行のアナリストは、いくつかの他の要因が、ビットコインを6カ月ぶりの高値に押し上げており、今後も上昇が継続する可能性があると指摘した。

ビットコインはここ1カ月で25%上昇し、約2万8000ドルをつけている。これによりビットコインの時価総額は約1060億ドル(約14兆円)増加しており、同期間に3%下落したナスダックをはるかに上回るパフォーマンスとなっている。

JPモルガンのニコラオス・パニギルトゾグルーが率いるアナリストらは、4月5日の顧客向けメモで「今回のビットコインの急騰は、クリプトの支持者らが『伝統的金融システムの弱点が露呈した』と考えるシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、シルバーゲート・キャピタルの経営破綻というイベントの間に起こった」と書いた。

ビットコインは、世界の金融システムが混乱する中で「破滅的なシナリオに対するヘッジ」として上昇したとパニギルトゾグルーは述べ、安全資産とされる金(ゴールド)もここ1カ月、同様な上昇を見せたことを指摘した。

JPモルガンはさらに、ビットコインの上昇を支えているのは強いセンチメントだけでなく、いくつかの技術的側面もあると述べている。

その1つが、1月にローンチしたOrdinalsと呼ばれるビットコインベースのNFTだ。新たなプロトコルのOrdinalsは、ビットコインのブロックチェーン上でのNFTのミント(鋳造)を可能にし、そのことが「ビットコインの付加価値を高め、ネットワークの実用性を高める」とJPモルガンは述べている。

また、パニギルトゾグルーによると、今後のビットコインの上昇にとってさらに重要だと思われるのは、2024年春に予定されている「半減期」だという。ビットコインには4年に1度、マイニングで新規発行されるコインの枚数が半分になる半減期があるが、2016年と2020年のこのイベントの直後の6カ月間でビットコインは最大30%上昇していた。

ビットコインは現在、2021年11月の史上最高値の約6万5000ドルを約60%下回っているが、年初来では約70%上昇している。

一方、ビットコインの今後に懐疑的な見方もある。「論理的には、ビットコインはすぐに引き戻される」とオアンダのアナリストのクレイグ・アーラムは4日の顧客向けメモに書いた。彼は、商品先物取引委員会(CFTC)が取引所大手のバイナンスを提訴するというニュースを含む業界の混乱が、ビットコインの最新の上昇を持続不可能にする可能性があると主張している。

「今後数週間、ビットコインがどのような動きを見せるか、特に業界にさらなる混乱が訪れるかどうかが注目されるのは間違いない」とアーラムは述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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