政治

2023.03.31 09:15

ロシア、米国人記者をスパイ容疑で拘束

遠藤宗生
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ロシア首都モスクワの赤の広場にある聖ワシーリー寺院の前に立つ兵士(Getty Images)

ロシア連邦保安庁(FSB)は30日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の米国人記者を「米政府のためにスパイ活動を行った容疑」で拘束したと発表した。ロシアのインタファクス通信が伝えた。

FSBは、WSJモスクワ支局に勤務するエバン・ゲルシュコビッチ記者が「米国側の指示に従い、ロシア軍需企業の活動に関する国家機密を構成する情報を収集していた」と主張。ロシア中部エカテリンブルクで「機密情報を得ようとしていた」同記者を拘束したと説明している。インタファクス通信によると、ゲルシュコビッチ記者は最高で20年の懲役刑に処される可能性がある。

本人のツイッターアカウントによると、ゲルシュコビッチ記者は昨年1月からWSJに勤務。これまで仏AFP通信やモスクワ・タイムズのほか、米紙ニューヨーク・タイムズのアシスタントとしても勤務していた。WSJは声明で、「FBSによる嫌疑を断固として否定し、本紙の信頼され献身的な記者であるエバン・ゲルシュコビッチの即時解放を求める」と表明した。

ツイッターでは、ロシアで活動する他の報道関係者からゲルシュコビッチ記者の拘束を批判する声が続々と寄せられている。英紙ガーディアンのピョートル・ザウアー記者は、ゲルシュコビッチ記者を「徹底的なプロ意識を持ったジャーナリスト」だと評し、「完全に偽のスパイ容疑」で拘束されたのだと訴えた。英紙フィナンシャル・タイムズのポリーナ・イワノワ記者は「報道は犯罪ではない。疑惑はばかげている」とツイート。ニュースサイト「ポリティコ」のエバ・ハルトフ記者は「何年も前にエバンがロシアに来た頃から知っているが、これは全く恐ろしいでっち上げだ」と非難した。

米政府がロシアのの侵攻を受けるウクライナへの支援を強化し、対ロ制裁を継続する中、ここ数カ月で米露間の緊張は一層高まっている。ジョー・バイデン米大統領は先月、ウクライナの首都キーウを訪問し、同国を「必要なだけ」支援すると表明するとともに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を批判した。これに対しプーチン大統領は、バイデン大統領をはじめとする欧米の首脳が「地域紛争を世界的な対立の局面に変えようとしている」と反論した。

4カ月足らず前には、ロシアで10カ月間にわたって収監されていた米女子プロバスケットボール(WNBA)選手のブリトニー・グライナーが米国に帰国していた。グライナーは昨年2月、ロシア入国時にモスクワの空港で荷物から少量の大麻オイルが見つかり、違法薬物所持と密輸の容疑で逮捕された。バイデン政権はロシアと囚人交換を行うことで合意。米国はロシアの武器商人ビクトル・ブート元受刑者を釈放し、グライナーは釈放された。2018年にスパイ容疑で逮捕された米国人のポール・ウィランは、現在もロシアで収監されている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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