経済・社会

2023.01.09 10:00

「牛のげっぷ」の温室効果は? 中学生が電通特命班に聞いた温暖化の常識

石井節子
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さあ始めよう、5分でわかる? 脱炭素


さて、私たち広告会社は「脱炭素」や「カーボンニュートラル」に関する広告を作ったり、イベントを企画したりしています。皆さんも「カーボンニュートラルの実現で日本の未来を」といったCMなどを見たことがあるでしょうか。

私は、昨年立ち上がった「カーボンニュートラル特命班」という電通のラボの代表をしています。社内でも、実は脱炭素についてよくわからない、ニュースを見ても「そもそも」を理解してないから全体像が見えない、分りやすく教えてほしいといった声があって、「5分でわかる脱炭素」という資料を作ったらとても喜ばれました。今日はみなさんにもその中から一部を抜粋してお話します。

始まりは20世紀。「沈黙の春」「オンリー・ワン・アース」


まずは「環境問題のこれまで」についておさらいしてみましょう。

1962年、女性の生物学者であり人気作家でもあったレイチェル・カーソン氏が「サイレント・スプリング(沈黙の春)」という告発本を出しました。

「沈黙の春」とはその名のとおり、春なのに森で鳥が鳴かなくなっている。実はアメリカの農薬や殺虫剤が原因で鳥たちが死んでいる。そしてそれが人体にも影響していて、謎の死が起こっているという内容の告発でした。食物連鎖を通じて化学物質が濃縮される「生物濃縮」という現象を訴えたのがこの本です。

そしてアメリカのその頃の大統領、ケネディがこの本に興味を持ち、議会に調査を依頼しました。そして、世界中で使われていた「DDT」という殺虫剤を実際に法律で規制しました。また、スウェーデンで初めて国際的な自然環境会議が開かれたのは1972年のことです。空や空気には国境がない、「Only one earth(オンリー・ワン・アース、かけがえのない地球)」という有名な言葉は、この会議から生まれました。

日本の「公害」の歴史でいえば、明治時代の「足尾銅山鉱毒事件」に始まり、大正時代の「イタイイタイ病」、その他「四代公害病」と言われるものがありますね。

東京での事象では「光化学スモッグ」が有名です。1970年の新聞によると、都内の学生が謎のガスを吸ってバタバタと倒れるという事件があり、そこからこの言葉が広く知られるようになりました。

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京都議定書とパリ協定、どう違うか


つい先日、エジプトで「COP27」が開かれましたね。COPとは「Conference of the Parties(気候変動枠組み条約契約国会議)」。世界的な自然環境について各国が年1回話し合う会議で、第1回は1995年、ドイツで開かれました。1997年に京都で開かれた「COP3」で締結されたのが有名な「京都議定書」で、これが脱炭素社会への世界的意識をぐっと上げる潮目となったとされています。

でも、実はこの京都議定書にはちょっと問題がありました。それは、先進国だけに温室効果ガスの排出量削減が義務付けられ、発展途上国はその対象外とされたことです。たとえば当時、ものすごい勢いで産業が発展し、環境汚染が進んでいた中国は対象外でした。そのため、当時のジョージ・ブッシュ大統領が「不公平だ」として、アメリカは脱退したのです。

その後、オバマ大統領が、当時CO2をもっとも排出していたその中国(アメリカは2位)やインド(3位)などに働きかけて、この問題をみんなで解決しようという話をしました。そして2015年に開かれた「COP21」で、有名な「パリ協定」が結ばれたわけです。

この時「現在の気温は産業革命の時代より約1度高いが、このままでは2050年には4度ほど高くなり、人類が地球に住めなくなるかもしれない。だから、2050年には産業革命からの気温上昇を2度以下にしよう、目標は1.5度に設定しましょう」という取り決めがなされました。
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協力=岡田麻衣子 構成・編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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