ビジネス

2022.12.13

米マクドナルド、食事代生涯無料の懸賞プレゼントを開始

Getty Images

成功の証と言えば、かつてはオフィスのデスク上に置かれた、名前が刻印されたネームプレートだった。次が、アメックスのブラックカード。1980年代に入ると、お酒なら「シャンパーニュ・ルイ・ロデレール・クリスタル」や「アブソルート・ウォッカ」、車ならポルシェ、有名デザイナーものがステータスシンボルになった。それらはみな、自らの地位を見せつける演出であって、成功そのものを意味するわけではない。あくまでも、ステータスの証しだ。

2022年になったいま、世界有数のファストフードチェーンが、最新プロモーションによって、ステータスシンボルの革命を起こそうとしている。現代のエリートたちが、ちょうど1980年代から90年代に存在していたエリート集団と同様に、見せびらかすことができるように。現在の経済情勢を考えれば、このプロモーションで獲得できるものは、ステータスシンボルの最高位であることに間違いない。

マクドナルドは2022年12月、「ゴールド・カード」が手に入れられるキャンペーンを開始した。誤解のないように言っておくと、このキャンペーンで手に入るのは、クレジットカードではない。マクドナルドのゴールド・カードは、もう何十年も前からその存在が知られている。持っているのは、ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツ、俳優のロブ・ロウなどだ。

これまでのゴールド・カードは、地域社会に貢献した英雄や有名人、インフルエンサーなどに、マクドナルドでの飲食を提供して、その功績に報いるための特典だった。同社創業者である故レイ・クロックや、フランチャイズのオーナーが、相手を指名して発行するものだ。カード保有者は通常、ゴールド・カードを発行したフランチャイズの加盟店舗でのみ、無料で食事ができる。ただし、クロック自身が発行した場合に限っては、マクドナルド全店で飲食代がタダだ。

クロックが存命中に発行した「Be Our Guest(「私たちからのおごり」という意味)」と名づけられたカードは、実際にはゴールドではなくピンク色だった。わかっているところによれば、贈られた人物には、ミシガン州知事だった故ジョージ・ロムニーもいたようだ。

そうした経緯もあって、現マクドナルドのマーケティングチームは、ウィリー・ウォンカ(英小説『チャーリーとチョコレート工場』に登場する工場長の名前)がチョコレートを生涯無料にできるなら、自分たちにも同じことが可能だと考えたのかもしれない。マクドナルド独自の発想ではないにせよ、これは、なかなか賢いマーケティング戦術だ。それに、ウィリー・ウォンカと違って、マクドナルドはこの話を映画化する必要もない。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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