ビジネス

2022.11.28 08:30

マーケティング業界の黒船「Braze」がコロナ禍の日本に上陸した理由


2011年に「Appboy(アップボーイ)」という社名でスタートした二人のスタートアップは、スマートフォンとアプリの普及がマーケティング業界に激変を起こす中で成長した。

当初、アプリ開発者のためのプラットフォームとして始まったビジネスが本格的な成長モードに突入したのは、2016年にCanvas(キャンバス)と呼ばれる看板プロダクトをリリースしてからのことだ。


CTOのジョン・ハイマンはハーバード大学のコンピュータサイエンス学部出身。在学中に日本語を学び、流暢な日本語を話す

ノーコードで販促キャンペーンを作成可能に


Canvasは、プログラミングの知識を持たない企業のマーケターが、直感的な操作性でモバイルやウェブをまたぐ集客や販売促進のキャンペーンを作成することを可能にした。そして、パーソナライズしたメッセージを、プッシュ通知、アプリ内メッセージ、メール、LINEなど様々なチャネルで顧客に配信可能にした。

「当時は大手企業が本格的にアプリの活用を開始した時代。2017年には、社名を顧客とブランドを強い絆で結ぶという意味を込めたBrazeに改めた。この単語は、金属部品を高熱で溶かして強固につなぎ合わせるプロセスを意味するもので、文字通り会社のミッションを表している」

同じ頃、初めての海外オフィスをロンドンに設置したマグヌソンは、当時から東京オフィスの立ち上げを視野に入れていた。きっかけは、2015年に新婚旅行で日本を訪れたことだった。「日本にはテクノロジーの感度が高い消費者が多く、企業のマーケターも新たなツールの導入に意欲的に取り組んでいる。すべては急速に進化していて、この市場のチャンスを逃したくないと思った」

Brazeは、IPO前の最後の資金調達ラウンドの2018年のシリーズEで8000万ドルを調達。評価額は8億5000万ドル(約1200億円)と、ユニコーンに近いレベルに達していた。しかし、潤沢な資金をベースに成長へのアクセルを大きく踏み込みはじめた矢先に訪れたのがコロナ禍だった。

2020年2月にシアトルで全米初の新型コロナウイルスによる死者が発生。8月上旬には死者数が15万人を突破し、ベトナム戦争(5万8000人)や第1次世界大戦(11万7000人)における米兵の死者数を上回った。全米各地で厳しいロックダウン体制が敷かれ、大都会では人混みが消えた。

「パンデミックはあらゆる業種に影響を与えたし、強烈な打撃を受けた業界もあった。それでも、Brazeのビジネスは一部の業界が壊滅的な状況に陥っても、別の分野の成長でそれをカバーすることができた。例えば旅行業界の需要が大きく落ち込んだ一方で、フードデリバリーやストリーミングのビジネスはこの間に大きく成長した」
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取材・文=上田裕資

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