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2022.11.18 09:30

日本のスタートアップが上場後に株価低迷する、3つの理由

露原直人
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コアメンバーの離脱


2つ目の理由は上場によってコアメンバーが離脱することだ。これは筆者が実際に何社ものスタートアップ経営者から聞いたことでもある。スタートアップ企業は倒産などのリスクが高いにも関わらず、資本的な制約もあり、役職員が得る給料は大企業に比べて低い傾向にある。しかし、それでは優秀なメンバーが加わらないため「ストックオプション(決められた価格で自社株を買える権利)」を付与することがある。

上場後に売り出した時や、ロックアップ(上場後、一定期間株を売却しない契約)が外れたタイミングでストックオプションを行使すると、まとまったお金を手にすることが出来る。もちろん保有量によって、その金額が数億円になることもあれば、数百万円の可能性もある。このタイミングで一定のお金を手にしたメンバーが、転職や起業に踏み出し、離脱してしまうことがあるのだ。

上場して信頼度も高まっているため、離脱したメンバーの穴を埋めることは比較的容易だが、やはり創業をともにしたコアメンバーが離脱する影響は大きい。

大企業病


3つ目は大企業病に陥ることで成長速度が落ちることだ。上場すればさまざまな制約が発生する。そして、会社の規模が大きくなれば意思決定スピードも落ちる。しかし、あくまで世の中の認識が「スタートアップ」である以上、成長速度が鈍化してしまえば、投資家は失望する。


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スタートアップブームで、多くの新興企業が誕生したことは喜ばしいことだ。しかしブームによって、創業から上場までがある意味でパッケージ化されてしまった向きもあり、経営者のなかにはIPOをする強い理由がない人も多い。

別にIPOをすることが偉いことでもなければ、IPOがゴールということもない。あくまで1つの大きな節目であり、不特定多数の投資家からすれば、そこがスタートラインだ。

今回質問をくれたインターン生には、経営者にIPOを目指した理由、そこに至るまでの苦労話、上場後の経営ビジョン、現在の株価への認識などを学生の間に聞いておくよう伝えた。

教科書には載っていないリアルで最高の教材となるであろう。

文=森永康平 編集=露原直人

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