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2022.11.11 16:30

起業家が育つ「スタンフォード大学」 日本の授業とは何が違うのか

露原直人
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私はアドバイザーとして2つのチームに参加しました。17時から20時まで授業があるのですが、その後も食事をしながら日付が変わるまで議論を続けることもあります。各学生が役割分担をし、ニーズの探索を医学部生、プロダクト作りを工学部生、資金調達計画やビジネスモデルの作成を経営大学院生が担当します。

実際のビジネスさながらのチーム運営です。

──混合チームの運営は難しそうですね。チーム支援の仕組みはありますか。

スタンフォード生といってもモチベーションはさまざま。やる気がなく、プロジェクトが消えていくチームもありましたね。授業では、チームの目的について「最初にしっかり話し合っておこう」「意思決定方法を決めておこう(多数決など)」とアドバイスがありました。

また授業のなかで「Yes and」の解説がありました。「Yes and」はシリコンバレーの文化を示す言葉として有名です。相手の意見を聞いたとき、まずは「Yes」と言い、その後「but」と続けて持論を展開し始めることがありますが、それをしない。代わりに、プロジェクトを前に進める「and」でコメントを続けるんです。つまりダメ出しを封印し、全員が課題解決に協力しようという文化です。

日本の医学部との違い


──参加して得られたことは。

チームにおける多様性の重要性を感じました。日本の医学部で「多様性あるチーム」を体験するのは難しい。スタンフォード大学のように、学部横断的なチーム経験ができるのは良いなと感じました。

また、プロジェクトが「単位化」されていることで、学生参加を後押ししています。一方、最終プレゼン後の継続プロジェクトは単位にならないので、私のチームもせっかく上位入賞で資金と外部のメンターがついたのに、最後は空中分解してしまいました。

ただそれでも継続するチームは複数ありました。小児麻痺の子ども向けのリハビリアプリを開発していたチームは、授業後も活動を続け、最近アプリのローンチにいたりました。やる気があるチームには支援の仕組みが整っていると感じます。

もう1つ、参加して良かったのが経営大学院が提供している「イグナイト(Ignite)」プログラムです。

4週間のフルタイムプログラムと8週間のパートタイムプログラムがあり、私はパートタイムで参加しました。参加者は約70人、半分が学内、半分が学外の企業派遣の人たちでした。このプログラムも学部横断的な多様性ある学生が参加していますし、そのうえ、大学外からも参加者がいます。とても刺激的でした。

授業は週3〜4日、夕方から3時間。パートタイムとはいえかなりハードでした。授業は経営全般の基礎知識のレクチャーとケーススタディによって進められます。

並行してチームプロジェクトが進行します。Day1に自分の事業アイデアを2分ほどでピッチし、全員で投票。得票率の高かったアイデアを中心にチームを作ります。2週間に1回ほどのペースでプレゼンがあるので、それをマイルストーンにプロジェクトを進めました。
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文=芦澤美智子、尾川真一 編集=露原直人

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