経済・社会

2022.09.29 06:30

欧州が直面する、天然ガス高騰と肥料不足が招く食料危機


市場から締め出されているロシア


ロシアは市場から締め出されているが、肥料をはじめとしたロシア産製品の価格は上昇している。つまり、ロシア企業はひとまず制裁を乗り切っているということだ。

肥料については、ロシアが世界の総生産量のおよそ10%、国際貿易のおよそ20%を占めている。2022年7月に国連とトルコの仲介で、黒海を通じたウクライナ産穀物と肥料の輸出再開が合意されたのは、戦争が始まって以来最大の進展だった。しかしロシア政府は、ロシア産肥料の輸出も進めるはずだったのに西側が約束を十分に守っていないと批判している。サプライチェーンのより深いところで発生している制約とボトルネックは、ほとんど解消されていない。国連は9月に入ってから、ロシア産アンモニアをウクライナ経由で輸出再開させようと、仲介に入っている。

ロシア産肥料については、直接的な禁止措置がなされているわけではないが、間接的に制裁がおこなわれている。つまり、個々の企業のオーナーや経営幹部、ファイナンス、機械やスペアパーツに対する制裁、バルト海ならびにバルト三国を通る鉄道経由での出荷に対する物流的な制裁などが課されている。

しかし、肥料の価格が上昇しているおかげで、ロシア企業は問題なく事業を継続している。ロシアの化学肥料企業フォスアグロは8月18日に決算発表を行い、2022年前期売上が90.9%増の3365億ロシアルーブル(およそ44億米ドル)に上ったことを明らかにした。肥料販売は前年同期比で10.2%伸び、570万トン近くになった。

だからといって、戦争を遂行するプーチン政権の懐に、棚ぼた式の現金収入が入るわけではない。肥料による収益は、ロシア国家予算の0.1%にすぎない。欧州と世界が、自ら肥料不足に苦しみつつロシア肥料メーカーに制裁を加えるのは、まさに自分の足を撃つようなものだ。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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