ライフスタイル

2022.10.08 13:00

「EQ(心の知能指数)」が米大学生のメンタルヘルス危機を救う

安井克至
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EQ(心の知能指数)を重視することは、大学コミュニティが学生の精神的健康のケアに備える上で不可欠だ。ダニエル・ゴールマンは、1990年の影響力ある著書『Emotional Intelligence: Why It Matters More Than IQ(EQ~こころの知能指数)』)で、あらゆる人間は理性的な自分と感情的な自分の両方があり、しばしば一方が他方をジャックすると指摘している。感情的知性は、自分の感情を自己管理する能力だと彼は主張する。それはエモーショナルリテラシー、すなわち自分が体験する感情の名前と原因を特定できる能力から始まるプロセスだ。

イェール大学感情的知性センター(YCEI)は、感情的知性を開発するための類似した5段階のアプローチを提唱しており、RULER(自分や他人の感情を認識[R]し、感情の原因と結果を理解[U]し、感情を意味合いを感じさせる言語でラベリング[L]し、文化規範と社会的な文脈に沿って表現[E]し、有効な戦略を使って感情を調節[R]する)という略語で呼んでいる。

YCEIは主としてK-12(幼稚園年長~高3)の教育者にこれらのツールを実践するための訓練を実施して大きな成功を収めているが、大学生のほとんどは、人格形成期に社会性と情動の教育を受けておらず、それが感情的知性の欠乏につながっている。

「自分が感じたことを認識、理解、あるいは言葉にできないとき、私たちは何もすることができません。それは自分の感情を使いこなし(それを否定せずすべてを受け入れ、さらには活用する)、自分の感情を自分の不利にではなく、有利になるように働かせるために必要なことなのです」とYCEIのディレクターであるマーク・ブラケット博士は述べている。

感情的知性は大学生がパンデミックから立ち直り、メンタルヘルス問題に苦しむ中で健康とサポートを得るために必要な広大で複雑な側面の1つにすぎないが、感情的知性の教育を強化することで、将来にわたって学生と大学に前向きな変化を与えることができるだろう。学生たちに教室外でも教室内でも理性的な自分と感情的な自分を作れる力を与えることで、大学は学内で起きているメンタルヘルス危機に、より総合的で多面的なアプローチで取り込むことできるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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