経済・社会

2022.09.20 13:30

景気後退は今年ではなく来年、その確率は65%と米バンガード予想

安井克至

Getty Images

西側諸国が引っ張る世界経済はかなり破綻しているように見える。だが、米資産運用会社のバンガードは心配していない。同社は今年、2022年に不況に陥ることはないと考えている。しかし、来年はその確率が高くなる。なぜか?

米国は1970年代以降、これほど高いインフレに見舞われていない。欧州の足並み揃わなくなりつつあり、寒い季節を前に途方もないエネルギーコストを抑えるために迅速な行動を取る必要がある。

確かにこの多くはウクライナでの戦争が原因だ。しかし、それがすべてではない。大規模な景気刺激策と紙幣発行、そして化石燃料を使って何かを作っている企業を罰することを目的とした政策は事態をさらに悪化させた。

しかし米ゴールドマン・サックスが9月12日の週に指摘したように、欧州は「悲惨」な状態で、他の国々も同様の苦境に立たされている。そうした国々は農家や石油会社を罰しているわけではなく、ロシアに制裁も行っていない。

日本の8月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は約31年ぶりの高さだ。ブラジルとインドは金利を引き上げている。米国の逆イールドカーブ(利回り曲線)は悪化していることが16日に明らかになり、第2四半期の2四半期連続でのマイナス成長を超える景気後退を示唆している。

景気後退するのか


第3四半期の経済データが発表されるとき、米政府が再び喜ぶかどうか見てみよう。米バークレイズ・キャピタルが正しければ、第3四半期の国内総生産(GDP)は前期比0.3%増となり、2四半期連続のマイナス成長は終わりを迎えるということになる。そうであれば、市場は経済が成長していることを意味すると受け止めるはずだ。そして、それにともなってインフレ率も上昇しているため、米連邦準備制度(FRB)は利上げをするだろう。

投資家はこの景気後退の一時停止を頭から追い出す必要がある。FRB、欧州中央銀行(ECB)、英中央銀行(BOE)はインフレ率が8%のまま、金利は2%ほどという状態を許容しないだろう(欧州では2%以下だ)。これでは、インフレをコントロールすることを使命とする中央銀行の存在意義が失われる。

世界最大のファンドマネージャーの1つであるバンガードは、FRBがインフレ傾向を先取りして、次回0.75%利上げする可能性が高いと予想している。1%の引き上げも可能性がないわけではないという。指標貸出金利は今年3.75%で終わり、来年は4.25%になると見込む。

誰も景気後退を口にしないところを見ると、FRBは利上げに踏み切るのだろう。そしてバンガードはそれが不況の原因になるとも考えていない。

「労働市場の強さを考えると、今年の景気後退はなさそうだ。当社の景気後退の予想は以前と同じで、今年景気後退する可能性は25%、来年は65%だ」とバンガードは先の発表で述べている。

アメリカン・エキスプレスがこのほど行った調査によると、中小企業の売上高は前年比でほぼ倍増したが、経済が足かせになり利益は横ばいだった。調査対象者の約75%が、自社がインフレの影響を受けていると回答している。

最新の「Small Business Recovery Report」では中小先業の37%が値上げを予定していると回答し、22%がサプライヤーと取引を交渉することを目指し、同じく22%が利益率の低い製品やサービスの扱いをやめると回答している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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