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2022.08.31 07:15

2万ドル台の「大衆車」でテスラに挑む、GMの反撃は成功するか?

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テスラの粗利益率は30%以上


テスラの今年上半期の粗利益率は30.6%という驚異的水準だったが、これに対し、GMの事業全体のEBIT調整後の粗利益率は8.9%だった。また、テスラは6万6000ドルの「モデルY」の需要が高いことを受け、製造キャパシティの大半を使ってそれに対応している。つまり、安価なモデルを追加する必要性はほとんど無いのだ。

テスラの元バッテリーエンジニアで、バッテリーアノードメーカーSilaのCEOを務めるジーン・バーディシェフスキーは、「自動車メーカーにとって、高すぎる価格で多くの車を販売することは問題ではない。それは、iPhoneを作るようなものだ」とフォーブスの取材に答えた。

しかし、現状の価格では、マスクが当初の目標としたEVの大量普及にはつながらない。新興EVメーカー「フィスカー」のCEO、ヘンリック・フィスカーはマスクの会社は成功の犠牲者かもしれないと話す。「高級車メーカーが安い車を作るのは非常に難しい。逆から始める方が簡単だ」と彼は話した。

GMのボルトEVは高級車とは言い難い。2016年末に登場したこの車は、GMの韓国部門が作った小型車用のプラットフォームを使って、ミシガン州で製造されている。スタイリング的には、セクシーというより、よく言えばキュートで、後部座席を中心に車内は広く、後部座席を倒せば大量の荷物を積むことができる。2017年には北米カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、その年の米国での販売台数は約2万3300台、テスラのSUV「モデルS」「モデルX」に次ぐ第3位の販売台数を誇るEVになった。

このモデルは、2020年後半にやや大型の「ボルトEUV」を追加して当初は好調なスタートを切ったが、2021年にLGが供給した欠陥電池がリコールの引き金となった。この問題でLGはGMに約20億ドルを支払うことで合意し、数カ月の販売・生産停止を経て、今年、新パックが導入された。その後の値下げは、バッテリー問題に対する謝罪と同時に、抜け目のないマーケティング活動にも見える。そして、この車は、ガソリン価格の高騰にも後押しされている。
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編集=上田裕資

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