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2022.10.27 19:00

宇宙、138億歳。「誕生後0.00001秒」から4分間のドラマ

石井節子
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※本稿は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所・教授 松原隆彦著『図解 宇宙のかたち「大規模構造」を読む』からの抜粋転載である。


宇宙には、なぜ「構造」があるのか。宇宙の構造は、どうしてできたのか。

もし、宇宙に何の構造もなければ、私たち自身はこの世界に存在しない。逆に、構造がありすぎると、宇宙は激しい場所になってしまって、私たちが生きていくのには都合が悪くなるだろう。つまり、宇宙には私たちにとって「ちょうどよい感じの構造」がある。

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「極端に短い」人の命、だから宇宙は永遠に思える


最初の宇宙には、現在のような構造はなかった。宇宙の誕生は、今から138億年前。それ以来、宇宙の様子は時々刻々と変化している。宇宙は恒久不変の存在であるかのように思っている人がいるが、それは、私たちの命が宇宙の変化する時間に比べて極端に短いからである。

昔の宇宙には、現在の宇宙に見られるような構造はなかった。とくに目立つような構造もなく、物質が混ざり合った状態でほぼ均一に広がっていた。

現在の宇宙は全体として温度が極めて低い。

だが、この冷たい宇宙は、宇宙が膨張してきた結果だ。宇宙の大きさに反比例して宇宙の全体的な絶対温度は下がっていく。例えば、宇宙の年齢が40万年のころ、宇宙の絶対温度は摂氏2500度ほどだった(現在は摂氏マイナス270度程度)。

生まれたばかり、「0.00001秒」歳の宇宙の姿は──


最初の宇宙には、限られた種類の物質しかなかった。宇宙が始まってから0.00001秒くらいまでの間は、素粒子がバラバラになって宇宙全体に満ち溢れていた。素粒子とは、それ以上は分解できないと考えられている粒子で、例えば、電子やニュートリノ、クォークなどと呼ばれる粒子などのことである。


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いずれにしても、そうした限られた種類の素粒子がほぼ均一に宇宙空間に満ち溢れていて、宇宙には特に「構造」と呼べるようなものはなかった。そして、とても温度が高かった。

誕生から4分後の宇宙、温度は8億度に


宇宙が始まって0.00001秒後ごろになると、私たちがよく知っている物質の元である、陽子や中性子が作られる。その原料になったのがクォークだ。クォークが3つ集まると、陽子や中性子になる。

宇宙が膨張すると、温度が下がるとともに、密度も下がっていく。

宇宙が始まって4分後くらいになると、温度は8億度くらいになる。このくらいになると、中性子が陽子とくっついて、原子核ができるようになる。最終的に、中性子のほとんどはヘリウム原子核の中に取り込まれる。ヘリウム原子核とは陽子と中性子が2つずつくっついた原子核である。ヘリウム原子核に取り込まれなかった陽子は、そのまま水素原子核になる。

宇宙が始まってから数分後の世界では、宇宙にある物質は水素原子核とヘリウム原子核、そして電子とニュートリノ、および光子が主なものである。その他の原子核は極めて微量な量しかできなかった。これらの粒子が空間にほとんど一様に存在していたのである。
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