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2022.07.20 19:00

新たな価値は辺境から生まれる。出島組織は出島に学べ

Forbes JAPAN編集部
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窓の柵や手すりなどに施された装飾も特徴的です。ヨーロッパのデコラティブな装飾を資料で見た日本の職人が、それを平面的に再現したことで生まれたもの。文化的背景の違いが混ざることで、独特の意匠が生まれている好例ではないでしょうか。

自分たちでは当たり前だと思っていることが、異なる背景をもつ人の視点を介すと、思いも寄らないことに発展することがある。多様な人と協業し、文化の違いから生まれる誤解さえも前向きに取り入れることが、新たなアイデアにつながります。

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西洋の資料をもとに、日本の職人がかたちにしたといわれる独特の意匠。

江戸からの距離


なぜ江戸から遠く離れた長崎に出島が生まれたのか。諸説あるといわれていますが、理由のひとつが「危険だから」だそう。外と交流し、新しいことが生まれるときに危険はつきもの。そのため、中央から離れた場所に交易の拠点がつくられました。

そこに、実力はあるけれど中央で政治的に勝てなかった人たちなどが集まったことで面白い文化が生まれたとのこと。これを現代に読みかえるなら、新規事業を生み出したり新しい人たちと付き合うのはリスクを伴うため、本体とは切り離して特区として位置づけ、実力者を配置することが重要だということです。

以上、私たちが出島で発掘したヒントの一部を紹介しました。大企業や自治体はもちろん、家族経営の中小企業や伝統工芸産業、農林水産業など、新しいことを始めたいけど本体を動かすのが難しい組織や業界で応用できるものがたくさんあるはず。出島をうまく使って、日本中に風穴をあけてほしい。長崎出身の私はそう思います。

実は、出島で見つけたヒントのなかでもいちばん印象的だった「世界中の出島がつながっていたということ」にならって、日本中の出島組織がつながるための「出島組織サミット」を長崎の出島で開催しようとしています。

出島組織が共通して持っている悩みや知見を共有し、知恵を交易する。多様な出島組織が交わることで文化のミックスを促す。長崎の出島を見学しながら出島組織のヒントを発掘するツアーも実施予定。現在絶賛準備中。全国の出島組織の皆さんのご参加をお待ちしています。興味がある方はinfo@bbbbb.teamまでご連絡ください。

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日本の出島組織がつながる「出島組織サミット」を開催予定。何が起こるか楽しみだ。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

鳥巣智行◎電通Bチーム平和担当。長崎市生まれ。コピーライターとして広告やキャンペーンの企画制作、新商品開発や企業研修などに携わりながら、ライフワークとして平和活動に取り組む。2021年に電通を退社し、故郷長崎でBetterをスタート。

文=鳥巣智行 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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