経済・社会

2022.07.05 09:00

NATOの新たなサイバー構想についてビジネスリーダーが知っておくべきこと

安井克至
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Getty Images

NATO(北大西洋条約機構)が、先にマドリードで行われたサミットで発表した新たな構想は、サイバー攻撃に不安を抱えているビジネスリーダーにとって重要な意味を持っている。同機構は、サイバー攻撃の脅威に対抗するために緊急対応部隊を結成し、軍と民間組織の協力体制を強化すると語った。

サイバー攻撃の脅威に対する防御、対応が重要であることはもちろんだが、この計画には本質的な課題と限界がある。

サイバー防衛の強化


「我々はサイバー、宇宙、ハイブリッド、その他の非対称的脅威や、新興技術や革新的技術の悪意ある利用に直面している」とNATOが声明で語った。「我々の利益、安全保障および価値に挑戦し、ルールに基づく国際秩序を損なおうとする中華人民共和国を含む国々との系統的競争に我々は直面している」

「我々は民軍協力を強化し、サイバー防御を大幅に増強する」と声明は語る。「さらに我々は、産業との提携も拡大する。自由意志に基づき、国家資産を使用して重大な悪意あるサイバー攻撃に対抗するバーチャル緊急応答サイバー能力を構築し行使することを同盟国一同は決定した」

直面する2つの課題


「サイバー世界にいる人々の多くがこの構想の可能性に大きく期待しているが、いくつかの課題にも直面している。第一に、すべてが自由意志に基づいているため、国や産業が実際に行動する意志をもつ必要がある。第二に、国によって行動内容が異なる可能性があるため、寄せ集めの体系になりかねない」とRankSecureのCEOで危機管理の専門家バルーク・ラブンスキーがメールインタビューで語った。

「最後に、民間産業と軍の協力は、称賛に値するとも危険でもあるともいえる。どちらに解釈するかは、その人の視点と政府の行き過ぎた行為をどう見るかによる」と同氏は付け加えた。

責任の所在


NATOの新構想は、企業や組織が自らをサイバー攻撃から守るための負担を軽くするものではない。

「情報戦争が急速に進化する脅威の一部であり続ける今、サイバーセキュリティ担当者は責任を持って対応にあたらなくてはならない」とBlackbird.AIのCEOワシム・カレドがメールで語った。

「一連の新種のリスクは、デジタルメディアを利用して有害な言動を広めることで、高度なノウハウと技術を使っている組織や従業員、幹部らに影響を与える可能性がある」

ハイブリッド戦争


「現在、軍事的敵対者や脅威アクターはサイバー、情報および物理的攻撃を組み合わせることで、非常に高い効果を発揮するハイブリッド戦争を仕かけている」とカレド氏はいう。「NATOの新たなサイバー緊急応答部隊は、国全体を脅かし破壊しようとするサイバー攻撃と戦う国々を助けるだろう」
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翻訳=高橋信夫

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