ビジネス

2022.07.04 18:00

ビル・ゲイツとダスティン・モスコヴィッツが語る、贈与の本質と効果

Forbes JAPAN編集部

COLUMN


「フィランソロピー」を革新するリーダー

世界最大規模の慈善団体であるビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)は、2000年の設立から600億ドル(約6.9兆円)もの資金を世界の貧困撲滅や保健分野に投じてきた。同財団日本常駐代表の柏倉美保子に聞いた。

──ゲイツ財団の特徴を教えてください。

何と言っても成果主義である点です。ボトルネックをしっかりと理解した戦略をもとに、ベストな解決方法を科学的なデータに基づいて実行、検証をしています。また、民間のビジネスと連携しつつ、スケールするソリューションのあり方や座組み、投資の仕方をつくるのが得意な点も特徴だと言えます。

新型コロナウイルス危機では、ゲイツ財団が立ち上げに関わったCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)という組織がワクチンの早期開発に大いに貢献しました。CEPIは、17年に世界経済フォーラムのダボス会議で設立された組織で、国や民間企業、国際機関が参加し、人類の脅威となる感染症のワクチン開発に投資をします。ワクチン開発は短期で巨額の資金を必要としますが、既存の資本主義の枠組みでは対応が難しく、新しい仕組みが必要だと訴えてきました。20年の新型コロナウイルスのパンデミック発生時には、同時に10以上のワクチン候補に投資し、当時は3年以上かかるといわれていた開発が結果的に1年以内に成功しました。国際保健への投資は、日本でも安全保障政策上、非常に重要だと認識され始めています。

──慈善団体として成果を上げつつリスクを取る仕組みとは?

民間資金や政府を代替するのではなく、それらを補完しながら、我々にしかできない役割をやることです。彼らがリスクを取れない分野こそ、我々の力でやる分野であり、そこで革新的な技術が出てきたときには投資をすることです。投資判断や戦略づくりにおいて「革新性」は重要な指標のひとつです。

財団は、ビルとメリンダのどちらかが亡くなってから20年後に解散するサンセット条項が付いています。時間を区切ることで、大きな賭けをしてしっかり結果を出すことを重要視しています。自分たちが生きている時代に必要なソリューションを最大限出していくことが大切なのです。

柏倉美保子◎ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本常駐代表。慶應義塾大学卒、ケンブリッジ大学MBA修了。世界経済フォーラム・グローバル・リーダーシップ・フェロー取得。投資銀行、責任投資などを経て世界経済フォーラムで地域戦略を担当。2017 年より同職。

インタビュ=ヴィクトリア・バレット 写真=ジョン・キートリー 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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