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2022.06.27 07:30

未来の政策のあり方を示す「プロトタイプ政策研究所」 国内有数のルールメーカーたちが結集

眞鍋 武

落合孝文・渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士シニアパートナー(写真中央)、クロサカタツヤ・慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授/企 代表取締役(同中央左)、小泉誠・デジタルリテラシー協議会/一般社団法人ディープラーニング協会(同中央右)、宮田洋輔・ポリフレクト代表取締役社長(同右)、松田一星・渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士(同左)

発売中のForbes JAPAN 2022年8月号では、日本企業に必要な新しい市場創造の手段として「ルールメイキング」を特集。

規制の適正化や国際標準化など、ルールづくりによる市場創造は、一部の強者だけに閉ざされたものではなく、いまやスタートアップなどの力なき挑戦者たちにも実現可能な取り組みとなっており、その動きは加速している。

6月27日には、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業が、ルールメイキングに精通する外部有識者を巻き込んだ「プロトタイプ政策研究所」を新たに立ち上げた。

政策・法制度とその実務運用の研究、新たな政策に関する提言、情報発信などを担うもので、研究所長に就任した同法律事務所弁護士シニアパートナーの落合孝文は、「まだ見通しが示されていないテーマについて、分野を横断した中長期的視点のもとで、政策・実務形成の端緒となる議論を行っていく」と意欲を示している。

国内の法律事務所が運営する研究所では、既存の法制度の解釈や実務的な運用方法に関する研究活動が一般的で、政策提言にまで踏み込むのは異例。一方、政策提言や規制緩和の働きかけをする協議会などの民間組織は、業種・業態ごとに数多く存在しているが、その大部分は特定分野内の事象や個別の法制度についての議論が中心だ。

政府内でも省庁ごとに扱う政策や法制度が縦割りで分かれており、分野を横断した議論がされないケースは少なくない。民間によるルールメイキングはここ数年、テクノロジー関連を中心に活発化しているものの、局所的な部分最適が積み重なると、社会を支えるシステムがつぎはぎだらけになってしまい、長期的には不具合が起きる可能性がある。

「例えば、デジタル業界が『現行法では紙で出さなければいけない届出を、デジタルに置き換えられるようにしてほしい』と具体的な提言をすることは、デジタル化という部分最適においては大きな意義があるが、その過程では本来、そもそも届出という規制自体が本当に必要なのかという議論もするべきだ」と発起人の一人であるポリフレクト代表取締役社長の宮田洋輔は説明する。

「こうした全体最適について、中長期的な視点で客観的な立場から提言をしていくのが新しい研究所の特徴だ」

メンバーは、内閣府の規制改革推進会議専門委員を兼務するなど、政策動向に詳しい民間企業のパブリックアフェアーズ担当者や元官僚、学術研究者、弁護士、政策コンサルタントなどの有識者で構成。

第三者による中立的な立場では、現実と乖離した理想ばかりを語る机上の空論のような政策提言が持ち込まれるケースもあるが、「あらゆる角度から全体最適論を議論して、『これだったらやれるよね』という実現可能な政策を提案できる強力なメンバーが揃っている」(宮田)。
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文=眞鍋 武 写真=大星直輝

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