ビジネス

2022.08.23 08:00

「ともコーラ」の仕掛け人、古谷知華のゼロイチ物語

鈴木 奈央

「ともコーラ」プロデューサー 古谷知華

この数年で、自分が所属する企業の外で、仕事やプロジェクトを手がける人が増えてきた。自分のスキルを違う組織で活かしたり、またはキャリアとは全く関係ない、趣味を開拓している人もいる。

今回話を聞いたのはそんな会社員の1人。大手企業で働きながらクラフトコーラのブランドのプロデューサーをつとめる古谷知華だ。そのブランド「ともコーラ」はすでに人気を集め、飲食店や食料品店、大手スーパーなどでも扱われている。

自分でゼロから事業を作りたい


会社員としての仕事は好きで楽しいが、古谷は、コンセプトから自分で考える、ゼロイチのものづくりをしたいと常々考えていたという。

社会人1年目の時、古谷は「気分で選べるパン」という企画を考えた。ハーブを練り込んだパンのブランドで、落ち込んでいる日は気分を盛り上げるためにレモングラス入りのサモサを選び、心を落ち着けたい日はラベンダーのクリームパンを食べるというようなイメージだ。アイデアを形にするため、常にその企画書を持ち歩いていた。

すると、一軒の有名パン屋が古谷の企画に興味を持ってくれ、話が前に進み始めた。ハーブを提供してくれる農園も見つかり、本格的にメニューの検討が始まった。ついに自分の企画が形になる! と思った矢先に事件が起こった。そのパン屋のアルバイトが2人同時に辞めてしまったのである。

小さいながらも人気店だったその店は、新しいことを進める余裕がなくなり、古谷の初めての企画はそこでストップしてしまった。自分以外の要因で企画がなくなるのがとても悔しかった。

突如、コーラに目覚める


古谷が次に挑戦したのはクラフトコーラだった。ある日読んでいた「食の文化史」に関する本の中で、コーラが薬草やハーブから作られていることを知ったのがきっかけだった。

子どもの頃、熱心な食育家庭で育った古谷は、コーラを飲むことを禁止されていた。親から飲んではいけないと言われていたコーラが実は薬膳飲料だったとわかると、一気に興味が湧いた。「コーラを自分でも作ってみたい」。古谷は自宅にあったシナモンやクローブを使って、その日のうちにコーラの試作を開始した。

初めて作ったコーラはしっかりとコーラの味がした。コーラと呼ぶにはまだまだだったが、自分でスパイスを煮詰めて作ったそれはどこか特別な感じがした。

その後、試行錯誤を重ね、自分が一番美味しいと思える味が完成した。コーラ作りを始めてから1カ月後、家に遊びに来た友人に飲んでもらったところ大絶賛だった。その友人がバイトをしているバーのマスターに話をしてくれ、バーに持っていったところ「明日から店で使いたい」と言ってもらえた。

バーで提供してもらった古谷のコーラは瞬く間に話題となった。他のカフェやレストランの関係者にも噂が拡がり、いくつかの飲食店から問合せが寄せられるようになった。
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文・写真=入澤 諒

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