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2022.06.11 12:30

NTTが解決した「インディ500」の課題 ファン体験はどう変わったのか

露原直人

4月10日に開催されたNTTインディカー・シリーズ第3戦(Getty Images)

クルマ好きの方なら「世界三大自動車レース」をご存知だろう。

「インディ500」はアメリカで1911年にスタートした世界最速の周回レース、フランスで行われる「ル・マン24時間」は1923年からスタートした耐久レース、そして「モナコGP」はモンテカルロで1929年から行われている市街地レースだ。

過去、この3レースを制したのは「モナコ・マイスター」と呼ばれたF1ドライバー、グラハム・ヒルのみ。近年、ル・マンでは中嶋一貴、小林可夢偉らが優勝の常連とまでになり、インディ500は佐藤琢磨が2度制覇。日本勢が見当たらないのは、もはやモナコのみだ。

そんな長き歴史あるモータースポーツ界において、もっともファン・エンゲージメントが進んでいるのがインディ500と囁かれている。

もっぱら「クラフトマンシップの頂点」とされてきた自動車レースに変化が訪れたのは1980年後半。オールドファンはご存知の通り、ホンダが第二期F1活動をスタートさせると、テレメトリー・システム(遠隔で走行中のマシンデータを測定する技術)をサーキットに持ち込んだ。モータースポーツは自動車業界における最新技術実験場の様相を帯び、その「技術実験」はいまや、クルマそのものの進化にとどまらない。

レースの活用で携帯電話の通話環境が改善


NTTドコモは、「日本のF1」とも言われるスーパーフォーミュラ・レースにおいて「ダンデライアン」チームをサポートしている。認知度向上の必要がないドコモがロゴを掲出している理由は、高速走行時の通信実証実験などを行うためだ。

10年ほど前、走行中の新幹線では携帯電話による通話が困難だった。今のような快適な通話環境をもたらしたのは、サーキットにおける高速走行実験のフィードバックあってこそ。

このようにレースを活用した技術革新は、自動車技術向上に留まらず、通信インフラなど生活に直結するフィードバックをもたらしている。

NTTは2019年からインディ500を包括する米自動車レース・インディカーシリーズの冠スポンサーも務めている。これはNTTグループの再編により、NTTデータ、NTTコミュニケーションズなどに分割されていた海外活動を一つの「NTT」ブランドに集約し認知を広げるというマーケティングの側面も大きいが、シーズンを通して、さまざまな実証実験ができる利点もあるからだろう。

NTTは将来のビジネスモデルとして「スマートワールド」を打ち出し、国内では「ウーブンシティ」を掲げるトヨタなどとタッグを組んでいる。
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文=松永裕司 編集=露原直人

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