経済・社会

2022.06.08 17:00

ウクライナから盗まれた穀物はどこへ? これまでにわかっていること

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Getty Images

ロシアが侵攻したウクライナから穀物を略奪しているという報道について、米英の政府高官が今週、相次いで内容を支持する発言をした。盗まれた穀物の移送先はアフリカや中東などに広がっているとみられる。国際社会はこの戦争が招いた食糧危機の解決に奔走している。

アントニー・ブリンケン米国務長官は6日の記者会見で、ロシアがウクライナの輸出用穀物を盗み、みずからの利益のために売っている「信頼に足る報道」があると言及した。英国のビクトリア・プレンティス農業・漁業・食料担当相も7日、国際会議の席で、穀物略奪疑惑について早急に調査を行うべきだと訴えた。

ウクライナは4月に、ロシアが穀物数十万トンを略奪していると非難していた。ウクライナではこのほか、ロシアによる封鎖で穀物およそ2000万トンが滞留しており、これが世界的な食糧不足の主な原因になっている。

ウクライナから盗まれた穀物は世界各地に移送されているもようだ。ニューヨーク・タイムズの5日の報道によると、米国は先月、アフリカを中心とする14カ国に対し、盗まれた穀物をロシアから購入しないよう警告した。

また、ウクライナ当局は先週、ロイターの取材に、ウクライナ産小麦約10万トンがロシアによってシリアに送られたと述べている。

移送先には意外な国の名も挙がっている。ウクライナの駐トルコ大使は先週、ロシアが盗んだ穀物を受け取っている国にトルコも含まれると語った。黒海を挟んでウクライナやロシアと向かい合うトルコは、和平交渉の仲介役として期待されている国のひとつだ。

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は先月、ロシアがウクライナから穀物を盗んでいるという報道は「フェイク(偽情報)」だとの見方を示している。だが、CNNが先月末に報じたマクサー・テクノロジーズの衛星画像には、ロシアの船舶がウクライナから盗まれた穀物とみられるものを積み込む様子が写っている。

欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は7日、「ロシアは食糧を武器にするという恥知らずな選択をした」とツイッターで厳しく批判した。

ただ、世界中で飢饉の危機も広がるなか、一部の国は産地などにこだわらず穀物の確保に動いているのが実情だ。ホーン国際戦略研究所(ケニア)のハサン・カネンジ所長はニューヨーク・タイムズに、「アフリカ人は食べ物の産地など気にしない。だが、その是非を論じるのは間違いだ。彼らにとって食べ物は切実に必要なものであり、議論するような対象ではない」とコメントしている。

ブルームバーグは6日、トルコが黒海を経由したウクライナ産穀物の輸送の安全を保証することで、ロシアと合意したと伝えた。ただ、ウクライナ側は、ウクライナの港がロシアの攻撃にさらされやすくなるとして、合意の受け入れに消極的な姿勢だという。

編集=江戸伸禎

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