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2022.06.02

フォックスコンがEV用半導体をマレーシアで製造する理由

フォックスコンCEO テリー・ゴウ(Photo by Scott Olson/Getty Images)

台湾のフォックスコンは、ここ数年、半導体の製造拠点として注目が高まるマレーシアに工場を建設し、電気自動車(EV)向けのチップを製造する計画だ。

フォックスコンの半導体事業投資会社のBIH(Big Innovation Holdings)とマレーシアのITサービスプロバイダのDNeX(Dagang NeXchange Berhad)は共同で、マレーシア国内に半導体工場を建設し、合弁会社を設立する覚書に調印したと5月17日に発表した。

採用するプロセスは28nmおよび40nmで、EV向け車載半導体を月あたり4万枚生産する計画という。

台北のシンクタンク、台湾経済研究所のダーソン・チウによると、マレーシアで製造された製品は、中国や米国、東南アジアに政治的な制約を受けずに販売することが可能で、「コストを下げるだけでなく、米中間の対立を回避できる」という。

さらに、「マレーシアは東南アジアで最も高度なIT能力を有しており、フォックスコンは現地で優秀な人材を雇用できる」とチウは指摘した。

S&P Global Market Intelligenceのチーフエコノミストのラジブ・ビスワスは、「マレーシアは、世界の半導体の組立、テスト、パッケージングの13%を占めると推定されており、現地に大規模な半導体施設を建設するフォックスコンの決定は、彼らがサプライチェーンの多角化を優先していることを示している」と述べた。

フォックスコンは、近年、複数の合弁事業を通じてEVへの進出を進めている。世界のEV市場は、24.5%の年複利成長率(CAGR)で成長し、2030年までに9570億ドル(約124兆円)規模に達すると予測されている。

フォックスコンは、米国を拠点とするEVメーカーのフィスカー(Fisker)や中国の自動車メーカー、吉利(Geely)などと契約を結び、ステランティスとの合弁事業では、自動車のコックピットソフトウェアを開発している。さらに、台湾のGigasolar Materialsとの合弁事業を通じ、EV用のバッテリーに関する専門知識を蓄えている。同社は、EV製造のための独自のプラットフォームも運営している。

編集=上田裕資

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