経済・社会

2022.04.14 07:00

食料不足、ペット撲殺、子ども引き離し ロックダウン続く上海で不満噴出

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Photo by Future Publishing / Getty Images

中国の「ゼロコロナ」政策が国民の間で混乱や恐怖を引き起こしている。中国政府は約2600万人の人口をかかえる世界最大級の都市、上海に厳格なロックダウンを敷いた。上海は中国で比較的裕福な地域で、金融ハブでもあり、またテスラやアップルといった海外の大企業が拠点を置く都市でもあるだけに、こうした措置がとられたのはいささか驚きだ。

住民はこの2週間ほど自宅に閉じこもった生活を強いられ、食品など生活必需品の確保もままならないという声も多く聞かれる。夜、住民が窓の外に向かって叫び、不満をぶちまる。と、そこにドローンが飛んできて、「自由への欲求を抑えよ、新型コロナ規制に従え」と警告する──。ソーシャルメディアでは、こんなディストピアのような状況を伝える動画も出回っている。

上海市当局は、保護者が新型コロナの検査で陽性と判定された子どもを、保護者から引き離して強制的に隔離させる措置も講じた。ロックダウンから逃れようとした人が連行されたり、感染者が飼っていたペットが保健職員に撲殺されたりしたという報道もある。配送アプリで食べ物を注文しようとしても在庫切れという通知がくる、病気なのに医療を受けられないといった苦情も出ている。

中国の習近平国家主席は、ゼロコロナの達成という重荷を地方政府に負わせている。そのため、失敗した場合の処罰への恐れから、地元当局による対応は厳しいものになっているようだ。習がみずからの行き過ぎた対策によって国民に不要な痛みを強いたと認めるのは、政治的に難しいとみられている。

ゼロコロナ政策による過酷な状況を伝える画像は中国指導部にとって不都合なものであるため、中国は検閲を通じて削除しようとしている。それでも住民たちは、動画や写真をソーシャルメディアに投稿し、どういった事態になっているか世界の人がわかるようにしている。フィナンシャル・タイムズは「食料の確保について心配しないといけないというのは人生で初めての経験だ」という上海在住の企業幹部の声も伝えている。

米政府は今週、在上海総領事館で緊急の業務に就いていない職員とその家族に、上海から退避するよう命じた。国務省は「現地での状況の変化にかんがみて、職員と家族の数を減らし、業務を縮小することが最善だ」と説明している。

アップルのスマートフォン「iPhone」の約3割を生産している台湾メーカーのペガトロン(和碩聯合科技)は、新型コロナ規制のため上海での生産を停止したと発表した。こうした大規模閉鎖は、世界のサプライチェーンの混乱に拍車をかけ、いちだんのコスト高とインフレを招くのではないかという懸念を高めている。

ロシアのウクライナ侵攻による混乱と相まって、食品や製品、原材料など、あらゆるものが不足するおそれが出ている。これは米国に対する警鐘ととらえることもできるだろう。製造業を米国に戻し、輸入品の中国依存度を引き下げることを検討すべきだ。

編集=江戸伸禎

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