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2022.04.04 16:30

ジェンダーレス・ビューティーのブームに乗りMalin+Goetzが好調


Malin+Goetzの売上は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大直前には、前年比で22%増と順調に成長していた。2021年には売上が30%増え、年間売上が5000万ドル近くまで伸びた。競争が激しさを増したうえに、コロナ禍で小売店が閉鎖し、高級ホテルのアメニティ事業も休止したという状況にあっても、成長を果たせたのだ。

「こうした状況は、私たちのアプローチが正しかったことを立証している」とゲッツは話す(ゲッツはかつて、スイスのデザイン会社でマーケティング責任者を務めていた人物だ)。「以前のコスメ業界は全体的に、飾り立てた過剰なパッケージングで、スキンケアの手順や決まりも面倒だった。私たちは、そうした傾向とはまったく逆の、シンプルな製法やパッケージングを取り入れた」

ユニセックスな香水を初めて世に広めたのは、1994年に「CK One」を発売したカルバン・クラインだ。Malin+Goetzはその10年後に、ユニセックスというコンセプトを自然派スキンケアに取り入れ、素朴で「フローラルさのない」、レザーやセージ、ユーカリといった香りの商品を発売した。

Malin+Goetzは、マンハッタンのチェルシー地区に店舗を構えた後、「サックス・フィフス・アベニュー」や「ノードストロム」といった高級百貨店に売り込みをかけて浸透させていった。けれども、Malin+Goetzの知名度向上において大事な役割を果たしたのは、ホテル向けアメニティ事業だ。

きっかけは、ある旅行ライターが、メキシコシティに新しく開業したミニマリスト的なブティックホテルのオーナーに、Malin+Goetzの商品を紹介したことだ。そのホテルではもともと、アメニティとしてエルメスの商品を置いていた。

「その旅行ライターはホテルオーナーに対して、ナチュラルなホテルの雰囲気には、エルメスのアメニティは似合わないと指摘した。そして、もっと若いブランドがいいということになって、Malin+Goetzに話が来た」とゲッツは言う。彼らは、創業して1年足らずで、アメニティ事業を早急に構築することを迫られた。

Malin+Goetzの最高経営責任者(CEO)を務めるブラッド・ホロウィッツ(Brad Horowitz)によると、同社の商品が持つ中性的な香りが、あらゆるジェンダーを迎え入れるホテルにとって理想的だったという。

Malin+Goetzのアメニティ商品は2007年、ニューヨークの「ザ・ソーホー・ホテル」と「トライベッカ・グランド・ホテル(現ロキシー・ホテル・トライベッカ)」でも採用された。

Malin+Goetzは10年前に世界進出を果たし、ロンドンを拠点とするホスピタリティ企業エニスモア(Ennismore)と提携した。エニスモアは、アーティスティックなホテルやレストラン、洗練されたコワーキングスペースを運営しており、米マイアミのホテル「SLSサウスビーチ」や、スコットランドの「グレンイーグルス・ホテル」など、世界90カ所でビジネスを展開している。

Malin+Goetzにとって、ホテルとの提携は、実店舗の展開戦略も活気づけるものだった。ただし、実店舗を数多く運営しているわけではなく、かなり「控え目」な展開だ。アメニティを置くホテルから徒歩圏内に、シンプルな店舗を14カ所のみ運営している。

同社は2018年以来、物流拠点をベルリン、シンガポール、台湾、ミラノ、フランスに新設してきたが、2022年内には、海外を中心に、さらに5店舗をオープンする。6月には、中国の上海と西安の拠点が営業を開始する予定だ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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