ビジネス

2022.03.11 08:00

福島から世界へ。風評被害をバネに「最高級」のコーヒーを生んだ珈琲店

田中友梨
2778

福島を世界的な食のブランドへ


震災からこれまでの中島社長の挑戦は、地元・福島のメディアにも注目されている。地元の新聞や全国紙の地域面に掲載された数は50回をゆうに超える。地元テレビ局も、ほとんど「制覇」した。だが、中島社長はPRに関して何か特別なことをしたわけではないという。

「プレスリリースなど出したことはほとんどありません。初めに取材に来てくださった記者の方は、どこからか私の挑戦の噂を聞きつけて、来てくださったようです。そして、一度でも接点が生まれた記者の方には、新しい取り組みがある度にこちらから詳細をお伝えしていました。そうしたことを繰り返しているうちに、私が取り上げられた記事を見て、他の記者の方まで取材に来てくださるようになったのです」

「PRのノウハウ」というと、多くの人は何か「特殊なテクニック」があるかのように思っている。だが、中島社長の成功は、PRで本当に大切なのは「どう伝えるのか」ではなく、「何を伝えるのか」「いかに丁寧に伝えるか」であることを、あらためて教えてくれているようだ。

さらに将来を見据える中島社長の夢は大きい。

「現在は、福島を世界的な食のブランドにするための企画を着々と進めています。私の夢は『福島』という地名を、『食の本物』を想起させるようなブランドにすることです。そして、将来はこの福島を、世界中から面白い人やモノが集まり、新たな価値が創出される場所にしたいのです」

そんな中島社長を支える富久栄珈琲のスタッフには、中島社長が講師を務める福島の調理学校の卒業生が数多くいる。

「福島の地で製菓や焙煎の技術を学んだ彼らにもまた、いつか世界に巣立っていって欲しいですね。『人と物が行き交い、福島が食の世界ブランドになる』そのために私は、福島で人を育て、富久栄珈琲を通じて、全国、そして世界へと福島の魅力を発信していきたいです」

文=下矢一良

タグ:

連載

全国発! 新規事業のユニークモデル

ForbesBrandVoice

人気記事