スティーブ・ジョブズの素顔:STORY04 ランディー・アダムス

若き日のビル・ゲイツ(右)とジョブズ。長年ライバル関係にあったが、<br>その裏では強い友情で結ばれていた。

ジョブズ急逝から1年後の2012年本誌11月号にて、苦楽をともにした仲間たちが、“ありのままのジョブズ”を語ってくれた。
今世紀最高の経営者の素顔とは。7つのエピソードを紹介する。


STORY 4 ランディー・アダムス (NeXT創業時のメンバーのひとり)

スティーブが、1985 年にアップルから追い出されたあとに立ち上げたコンピューター会社「NeXT」。私は、当初彼からの入社の誘いを断っていました。自分の会社を売却したばかりだった私は、まだ本格的に仕事に戻る気になれなかったのです。
しかし、断った数日後にはまた、留守番電話にメッセージが残されていました。

「みすみす逃していいのか、ランディー? 一世一代のチャンスだっていうのに、おまえは自らそれを棒に振ろうとしているんだぞ」
そんな言い方をされると、私の気も変わらざるを得ません。
その後、私は会社を売って得た現金の一部でポルシェ911を買いました。偶然にも、スティーブも同じ車を同じころに購入。隣に駐車した車にドアをぶつけられないよう、私たちは3つの駐車スペースに2台を置いていました。

そんなある日、「大急ぎで、車を動かさないと」と、スティーブが慌てて私の個室にやってきました。「なぜ」と聞いてみると、スティーブはこんなふうに言ってきたのです。
「ポルシェを隠さないと。(大物実業家の)ロス・ペローが来るって言うんだ。投資を検討してくれるらしいのだけど、お金を持っているって思われるのはまずいだろ」
そこで我々は、事務所の裏に急いで車を移動させました。結果、ペローは2,000万ドルをNeXTに投資。役員にも就任しました。

ビル・ゲイツが会議のためにNeXTにやってきた日のことも忘れられません。まず、受付からスティーブに、ゲイツがロビーに到着したことを知らせる内線が入りました。スティーブは大して忙しくもなかったのに、「上がってもらうように」と、なかなか伝えなかったのです。
結局、1時間もゲイツをロビーで待たせたんですよ。ふたりのライバル関係が如実に表れていた一件です。エンジニアたちは、というと、ロビーで待つゲイツを質問攻めにし、楽しい時間を過ごしました。

私がNeXTを去ったのは、同社のワークステーションに光学ドライブを使用するかどうかで、スティーブと私で意見が食い違ったのがきっかけでした。しばらくすると、彼は私に、NeXTに関わるソフトウェア事業を興すことを勧めてきたので、私は彼の言う通り、セコイア・キャピタルから200 万ドルの出資を得て起業しました。しかし、事業が軌道に乗ろうとした矢先、スティーブは私に「我々はワークステーション事業に見切りをつけ、ソフトウェアに注力していく」と言ってきました。
ハードウェアの単価が下がり、コモディティ化していると思う、というのがその理由でした。そこで僕は「じゃあPCでも売ったらどうだい」と言ったところ、スティーブはこう返してきました。

「PCを売るくらいなら、犬でも売るよ」

コニー・ギリエルモ=インタビュー 山崎正夫=イラスト 徳田令子/アシーマ=翻訳

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