「青い目の欧州人が殺されている」 ウクライナ報道の人種バイアス

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ロシアによるウクライナ侵攻について、世界中の報道機関が時々刻々と伝える中で、メディアやジャーナリストが人種に絡めた問題表現を使っているとの批判が相次いでいる。

米CBSニュースのあるベテラン海外特派員はウクライナについて、「長年にわたり紛争が続いてきたイラクやアフガニスタンとは違う」とし、慎重に言葉を選びながらも、「これは比較的文明化され、欧州に近い都市だ。このような事態は予想できなかったし、起きてほしくもなかった」と述べた。

また英BBCの番組では、ウクライナの元次長検事が、ロシアとウクライナの紛争が自分の感情を揺さぶる理由として、「金髪の青い目をした欧州人が殺されている」と発言した。

メディアの世界では、微妙な言い回しによって特定の人種グループがさらに疎外される例が、数えきれないほどある。視聴者はメディアの表現により、戦争や紛争が、先住民や黒人の暮らす「第三世界」や「開発途上国」のみで起きるものであると信じ込まされる。ニュース報道にあるバイアスが、特定の人種グループに対する抑圧の一因となっている。

どのようなニュースが報道する「価値のある」ものとされるかをみてみると、人種差別がどれほど蔓延しているかがわかる。ウクライナに住むアフリカ出身移民が国境を越えさせてもらえないなどというニュースはもっと取り上げられるべきだが、実際にはほとんど報道されず、話題も集めない。

エチオピアでは、2020年11月から政府軍とティグレ州の武装勢力との間で紛争が続き、数万人が犠牲になり、30万人以上が飢饉に見舞われているが、報道されることは少ない。西アフリカのカメルーンでは2016年から、北西部の英語圏で独立運動が紛争に発展し、100万人以上が避難民化している。だが世界で注目を集めるのは、白人に影響する危機のみのようだ。

米コネティカット州ブリッジポートでは昨年12月、ローレン・スミスフィールズ(23)が、出会い系アプリで知り合った男性を自宅アパートに迎え入れた翌朝、遺体で発見された。彼女の死は家族に通達されなかった。この事件はラッパーのカーディ・Bがソーシャルメディアに投稿して初めて、全米の注目を集めた。
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編集=遠藤宗生

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