人気続く「アーバンスポーツ」に見る、東京五輪レガシーの先のヘリテージ

宇藤 智子

実際、アーバンスポーツに対する関心が高いのが、1995年以降に生まれた「Z世代」と2010年以降に生まれた「α(アルファ)世代」だ。

筆者は、スポーツ施設やそこでの活動が人々や企業を「磁石」のように吸い寄せる装置となり、スポーツによるまちづくりを駆動させる仕組みを「磁場産業」と呼んでいるが、まさに笠間市でも、「ムラサキパークかさま」がオリパラ後もこうした若い世代を引き寄せる磁力として機能していくことが期待されている。

東京五輪スケートボード女子ストリート・金メダルの西矢椛選手と銅メダルの中山楓奈選手(Photo by Pierre Costabadie/Icon Sport via Getty Images)
東京五輪スケートボード女子ストリート・金メダルの西矢椛選手と銅メダルの中山楓奈選手(Photo by Pierre Costabadie/Icon Sport via Getty Images)

ちなみにZ世代の特徴は、多様な価値観を持ち、半数以上がSnapchatやInstagram、Facebookを1日に複数回利用しており、動画コンテンツを週に20時間以上視聴する傾向にある。コネクティビティ(つながり)を最大限に活かしながら常に新しい情報を吸収する「ソーシャルネイティブ」と呼ばれ、アーバンスポーツだけでなく、eSportsやフィットネスに興味を持っている。今後のアーバンスポーツ、ひいてはスポーツ人気のカギを握る、極めて重要な世代だ。

α世代はまだ小学生であり、どのような消費性向があるのかも不明だが、各地で開催されているスケートボード教室は親に連れられてきたα世代の子どもたちで賑わいを見せており、次なるターゲットと期待される、注目の存在だ。

地域スポーツコミッションが司令塔に


笠間市の優れたところは、単にスケートパークだけを整備したのではなく、指定管理者である(命名権者でもある)ムラサキスポーツと連携して、地域おこし協力隊の隊員を指導者として配置するとともに、大会・イベント・合宿の誘致を担うスポーツツーリズムの司令塔として「笠間スポーツコミッション」を設置したことだ。

筆者もアドバイザーとして同組織の運営やスポーツ庁の地域振興支援事業などにも携わってきたが、地方公共団体、スポーツ団体、民間企業等が一体となり、スポーツによるまちづくり・地域活性化を推進する常設組織である「地域スポーツコミッション」が、高齢化と少子化に悩む地方都市に誕生したことは画期的と言える。

「スケートボードの笠間」というイメージを定着させ、2021年3月に策定された基本計画によれば、今後は全国・国際規模の大会の誘致や開催時における宿泊交通等の案内・手配、ボランティアの募集・運営といったワンストップ機能の強化、そして市民の利活用を促進していくという。

ムラサキスポーツ専務取締役の金山洋一氏と笠間市長の山口伸樹氏
ムラサキスポーツ専務取締役の金山洋一氏と笠間市長の山口伸樹氏 (c) ムラサキスポーツ
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編集=宇藤智子

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