テクノロジー

2022.05.04 11:00

その「チン」、危ない! 私たちはそれを毎日0.5mg食べている

石井節子
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家庭環境にだけ目を向けるのは、あまりにも見方の狭いアプローチかもしれない。曝露の科学研究と内分泌攪乱物質の測定をリードするひとり、ニューヨーク州保健局のクルンサチャラム・カンナンの話を聞いてみよう。彼はたぶん、この分野で私が知るかぎり最高に謙虚な人物だが、恐ろしい現実を発表している。

「私たちは毎日、プラスチックを0.5ミリグラム食べています」と彼は説明する。「腸にプラスチックボトルの蓋が詰まった魚を目にするような形で見えるわけではありませんが、同じプラスチックが、顕微鏡で見えるぐらいかもっと小さい粒としてそこにあるのです」。

また、スーパーで購入したさまざまな食品、日用品、家庭の埃で測定したフタル酸エステルのレベルについても、データを示している。彼は、こうしたものでは、人々を対象に測定されているレベルにもとづく体内曝露量の5分の1しか説明できない、と推定している。ならば、隠れたフタル酸エステルは皆どこにあるのだろう? 職場のほか、通勤通学に使う車や地下鉄やバスなど、ふだんの暮らしで訪れる場所を考えよう。もっと広範なアプローチを採用して、そもそもこうした曝露がなくせたらどうなるだろうと考えてみてほしい。


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身のまわりに化学物質があふれ、その危険性の調査は厄介で物議をかもすという事実に、私たちはくじけてしまうのだろうか?そんなことはない!こんな状況でも、多くの介入が実際に功を奏し、良い成果を上げていることは、注目に値する。

介入の成功は、もっと幅広い変化の必要性を裏づけている。こうした手だての多くは家庭に的を絞っているが、人々の多くは週末や夜をそこで過ごしているにすぎない。公共スペースのすべてが、化学物質への曝露をもたらすおそれがあるのだ。私は、このような問題の解決は政策だけが頼りだとは思っていない。もっと幅広い活動の必要性について話を進めよう。私たちは、だれもが恩恵をこうむるように、自分たちの購買行動を利用してシステムを変える必要がある。

(この記事は、レオナルド・トラサンデ著/中山祥嗣[監修]斉藤隆央[訳]『病み、肥え、貧す有害化学物質があなたの体と未来をむしばむ』から編集・引用したものです)

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