カメラマンが語る、北京五輪で「混乱」した3つの現場

宇藤 智子
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3. スキージャンプ混合団体で相次いだ失格


ラスト、3件目はスキージャンプの混合団体でスーツ規定違反による失格が続出した時のことです。

新種目ということで期待が寄せられていましたが、中でも日本チームの1番手を務める高梨沙羅選手に注目が集まっていました。

そんなプレッシャーの中、1本目で103メートルの見事な大ジャンプを見せてくれましたが、なぜか電光掲示板の順位が上がってこない。不思議に思っている間に次々と他の選手たちも飛んできましたが、それでも表示が変わっていないように見えました。

全選手の1回目の飛躍が終わり、一度カメラマンの控え室に戻った時でも状況がわからないままで、「計測システムの故障か?」などと情報が錯綜していました。

結局、高梨選手はじめ女子の5選手が失格になったことは、ジャンプ2回目の撮影に入る少し前に、インターネットでニュースをチェックして知りました。それほど現場は混乱していました。

スタートリストには高梨選手の名前がありましたので驚きながらも、祈るような気持ちで彼女のジャンプを待ちました。


Photo by YUTAKA/AFLO SPORT

2本目も98.5メートルという立派なジャンプを飛んでくれました。着地時から涙した姿はとても見ていられませんでしたが、つらい状況でも、ゴーグルもヘルメットもそのままで、他のメンバーが飛ぶのを最後まで見守っていたのはさすがでした。

テレビでは、彼女が小林陵侑選手にハグされる姿が映っていたようですが、現場ではほかの国の選手やスタッフから励まされているシーンも何度も見ました。僕たちも、最後まで一生懸命な姿を見せてくれて「ありがとう」という気持ちで一杯でした。

不穏な空気が漂っていましたが、2月20日には「前進していきたい」との嬉しいコメントが。24日の時点では今後の大会出場は未定とされ、五輪後1戦目のW杯にも欠場する見通しのようですが、欧州で調整を行っているそうです。

北京五輪は幕を閉じましたが、引き続きアスリートたちの活躍、また様々なドラマや出来事についてもカメラに収め、伝えていきたいです。



高橋誠
◎アフロ所属。1977年生まれ、北海道出身。五輪取材は今回の北京で8回目。その経験を活かし、自身での撮影に加え、現地デスク業務もこなす。

編集=宇藤智子

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