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2022.01.01 17:00

「テスラマフィア」がCTOを務めるトンネル掘削会社、Petraの実力

画像はイメージ(Andrew Holt /Getty Images)

テスラの5人の創業メンバーの1人であるイアン・ライト(Ian Wright)は、過去20年間にわたり電動の乗用車やトラックを開発してきた。しかし、現在はシリコンバレーのスタートアップ「Petra」のCTO(最高技術責任者)として、送電網を気候変動や火事から守るテクノロジーの開発に専念している。

Petraは、ロボットドリルで固い地盤を掘削することにより、送電線の埋設コストを削減することを目指している。同社は、商業運転を開始するため、新たに3000万ドル(約34億円)を調達したことを明らかにした。

Petraの設立は2018年で、かつては「ArcByt」という社名だった。同社は、当時取り組んでいた熱破砕掘削技術の改良のためにライトを引き抜いた。ライトの指揮のもと、同社は「Swifty」という半自律型の掘削ロボットを開発し、密度が最も大きい岩石の1つであるスークォーツァイト(スー珪岩)を使ってミネソタ州で20フィート(約6メートル)のトンネルを掘ったという。同社は、このテストによって同社の取組みが有効であることを実証できたとしている。

「実証テストでは、通常ダイナマイトを用いる地質で、1分間に平均1インチ(約2.5cm)を掘削することに成功した。これまで、これほど硬い岩盤でトンネルを掘る技術はなかった。今回の成果は、岩盤に触れることなく効率的に掘削する、Swiftyの熱を使った掘削技術によるものだ」とライトは述べた。

気候変動によって山火事や洪水の頻度と規模が増大する中、米国は電力の供給網や水道、下水道の強化を図っており、Petraは電力会社やエンジニアリング会社と協業してこうした対策を図ろうとしている。テスラとスペースXのCEOであるイーロン・マスクは、Boring Company(ボーリング・カンパニー)を設立して車両用に地下トンネルを掘削することを目指している。

一方、Petraが目指すのは、電力網用に20〜60インチ(約51cm〜152cm)の小口径トンネルを掘削することだ。バイデン大統領は先月、電力インフラに650億ドル、耐久性強化に470億ドルを投じるインフラ投資法案に署名しており、Petraが事業を拡大する上で絶好のタイミングだと言える。

Petraは、米国で地上の送電線を地中化する事業の規模を、約3兆ドルと見積もっている。このうち、山火事が多発するカリフォルニア州のシエラネバダ山脈など、岩盤が硬い地域のトンネル掘削は、9000億ドルの市場規模があるという。
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編集=上田裕資

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