ワクチン接種進む英国「スポーツ観戦」でも規制緩和、財政支援も


──規制緩和後の観戦体験を向上させるために、英国のスポーツ組織はどのような準備をしているのでしょうか。

Matt:いくつかのサッカークラブはシーズンチケット保有者等に対し、観戦意向に関するアンケート調査を実施しているようだ。具体的な準備の状況は組織により様々だが、スポーツ組織はこの状況を改善するために、デジタル活用を通じた観客の安全性確保とマネタイズを両立することを検討し始めている。

Clive:スポーツ組織は、これまでのように「ファンは無条件でスタジアムに観戦に来る」という発想から脱却する必要がある。そして、そのためにはクリエイティブな発想によるイノベーションが求められる。

例えばチケットに関しては、従来の紙のチケットに代わる新たなサービスが生まれる可能性が高いと考えている。スポーツ組織は、今後感染防止の観点から来場者の情報を厳密に把握することが求められるが、紙のチケットではその実現が難しい。なぜなら従来広く行われてきたようにチケット購入者が紙のチケットを知人に譲渡すると、実際の来場者の情報を把握することが困難になるためである。

このような状況下では、チケットを電子化したうえで、例えばブロックチェーン技術を活用してチケット保有者をトラッキングするサービスも考えられるし、北米で広く活用されているようなスポーツ組織公認の転売チケットプラットフォームが生まれるかもしれない。チケットの2次流通市場は北米で大きな市場を形成しており、英国のスポーツ組織も自らのサービスとして取り込むことを考えるべきだろう。このようなサービスは観戦者の安全性の確保を実現するとともに、利用者の利便性向上のための付加価値提供、すなわち新たな収益源を確保することにも繋がる。


Photo by Stuart MacFarlane/Arsenal FC via Getty Images

Harry:スポーツ組織はあらゆる観点から、ファンがスタジアムに戻るための検討を行うべきである。

チケットに関して言えば、2次流通市場と合わせてダイナミックプライシングの導入も検討すべきだろう。

また、従来スタジアム内ではあらゆる箇所で多くの行列が形成されてきたが、このような行列は感染対策の観点から好ましいものではなく、何かしらの対策が求められることになる。座席スペースの有効活用等あらゆる手段を検討する必要がある。

Clive:北米のスタジアムでは、客席からアプリで飲食物を注文し、座席で受け取るようなテクノロジーも誕生している。このような従来先進的取組みとして考えられてきた事例は、今後のスタジアム・アリーナ領域におけるニューノーマルになる可能性がある。
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文=菅原政規、安西浩隆、寺尾慎吾

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