コロナの「耐え難い」後遺症、自殺増加の要因に

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米レストランチェーン「テキサス・ロードハウス」最高経営責任者(CEO)のケント・テイラー(65)が今月、自殺した。家族によると、テイラーは新型コロナウイルス感染症から回復した後、ひどい耳鳴りなどの後遺症に悩んでいた。

耳鳴りは生活の質低下につながる症状だ。家族は「ケントは元陸上チャンピオンらしく懸命に闘ったが、最近では苦痛がさらに増し、耐え難いものになっていた」と説明した。

耳鳴りは、コロナ感染の後遺症としてよく報告されるようになっている。以前から耳鳴りがあった人の約40%は、感染後に症状が悪化。感染後すぐに耳鳴りが始まった人もいる。

耳鳴りはそれだけでも不安症やうつ病の共存症を増加させる。耳鳴りがある人の33%がうつ病、45%が不安症に苦しんでいる。また、耳鳴りと自殺の増加に因果関係がある可能性も分かっている。

感染後に味覚と嗅覚の喪失が続くことも、多くの人にとってストレスの原因となっている。頭がぼんやりした状態や、記憶の喪失など認知面での問題が続いたり、疲労の波に繰り返し襲われたりする人もいる。後遺症によって生活の質が大きく損なわれ、職場復帰ができなくなった人もいる。

感染後も症状が数カ月続く人は、「長期」コロナ患者と呼ばれる。中には、ワクチン接種により症状が緩和したり消えたりした人もいる。その理由はまだ分かっていない。考えられる可能性としては、体内に残るウイルスがワクチンにより増えたT細胞によりようやく除去されたと、後遺症の原因である過剰な自己免疫反応がワクチンにより解消されたこと、あるいはワクチンのプラセボ(偽薬)効果がある。

医療関係者は、新型コロナウイルス感染症から回復した患者に対し、うつや不安の症状について尋ねるなどの経過観察を続けることが非常に重要だ。これには、自殺念慮や自殺行動に関する具体的な質問も含まれる。

自殺行動について尋ねると相手の「背中を押して」しまうという考えは、誤りであることが証明されている。むしろ、自殺念慮があるかどうかを家族や友人が聞くことで、その人の命を救える可能性が高まる。

雇用主は、従業員が遠隔勤務をしている場合は特に、定期的に様子を確認する必要がある。自宅で働いている従業員は、孤立を感じやすい。雇用主が従業員の健康問題について尋ねられることには限界があるので、適切なやり方については弁護士に相談しよう。また、従業員が必要とする支援を受けやすくなるような従業員支援プログラム(EAP)を用意することも考えること。

編集=遠藤宗生

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