コロナ禍で誕生した「ワクチンツアー」 各国の富裕層が殺到

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旅先で新型コロナウイルスのワクチン接種を受けられる「ワクチンツアー」の存在が最初に伝えられたのは昨年12月、インドでのことだった。目的地はロンドンやニューヨークで、1人12万9000ルピー(約19万円)を支払えば、必要な隔離期間を経た上で現地の医療機関にてファイザー・ビオンテック両社が開発したワクチンの接種を受けられるというものだ。

接種費用は料金に含まれており、帰国前に少し市内観光もできるとされた。さらに、ロシアでの同国製ワクチン「スプートニクV」接種ツアーも検討されていた。

そして先月には、カナダの裕福な夫婦がプライベートジェットをチャーターし、主に先住民族からなる人口わずか100人のビーバークリークに入り、ホテル従業員のふりをしてワクチン接種を受けようとしたことが報じられた。また米紙ニューヨーク・タイムズによると、医師たちのもとには裕福なブローカーや企業役員から、2万ドル(約210万円)を払うのでワクチンを優先的に接種してくれないかといった問い合わせが相次いでいるという。

米フロリダ州では、同州の居住者かどうかにかかわらず65歳以上の人に優先的にワクチンを接種するとした行政命令に州知事が署名した結果、米メディア大手タイム・ワーナーのリチャード・パーソンズ元最高経営責任者(CEO)をはじめ、他州からフロリダに入り優先的に接種を受ける富豪が続出。地元テレビ局NBC6サウス・フロリダによると、こうした「ワクチン観光客」の中にはブラジルやアルゼンチンから訪れた人もいたという。

フロリダ州のある旅行会社は現在、65歳未満の人を対象にイスラエルへの旅を提供している(同国での入国規制により、対象者はイスラエル国籍の保持者限定だ)。この旅行代理店メモリーズ・フォーエバー・トラベル・グループを運営するロイ・ギャルは、フォックス35ニュースに対し、参加者は30~40代の人々で、イスラエル入国時に義務付けられている10日間の隔離を終えると、一日の終わりにワクチン接種センターに向かうと説明した。

「最後の時間まで待つと、使わなかったワクチンがたくさん余っていて、職員はそれを無駄にしたくないので外に出てきて『ワクチンが欲しい人はいないか!』と叫ぶ。ツアー参加者はそこで中に入って、接種を受ける」(ギャル)。参加者は往復チケット代の850ドル(約9万円)に加え、隔離期間から2回目のワクチン接種を終えて帰途に就くまでの約2カ月の滞在費として月2000ドル(約21万円)ほどを支払う。
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編集=遠藤宗生

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