「電気だけで飛ぶ宇宙ロケット」を開発中の79歳の物理学者

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現代の宇宙船の大半は、ロケット燃料を燃やすことで打ち上げや操作を行っているが、将来的には、電気のみで飛ぶロケットが誕生するかもしれない。

カリフォルニア州立大学フラトン校の名誉教授で物理学者のジェームズ・ウッドワードは、NASAの「NIAC(NASA Innovative Advanced Concepts、革新的先進コンセプト)」プログラムから研究資金を得て、同僚たちとマッハ効果を応用したロケットエンジンを開発した。

マッハ効果とは、オーストリアの物理学者、エルンスト・マッハが提唱したもので、アインシュタインの相対性理論にも影響を与えた理論だ。ウッドワードが開発したロケットは、初期テストで良い結果を出し、現在はフェーズ2のテストを実施中だ。

ウッドワードは、この新たな推進システムが太陽系内だけでなく、星間飛行を可能にする技術だとしており、実現すれば宇宙科学における大発明となるだろう。

彼が開発したのは、電気を加えると膨張と収縮を繰り返すピエゾ結晶を用いた技術で、大量のピエゾ結晶に電気を通し、推進力を生むものだ。物質をある瞬間は重く、次の瞬間は軽くすることができれば、ニュートンの運動の第3法則を応用し、物質を後ろに押し出すことで推進力を生み出すことが可能になる。



ウッドワードによると、マッハ効果を用いた小型エンジンは、1台で100ミリニュートン程度の力を生み出すという。机の上に置いたリンゴは、重量によって1ニュートンの力を机にかけている。つまり、宇宙船を飛ばすには、莫大な数の小型エンジンが必要になる。

現在開発されているマッハ効果を用いたエンジンは、一辺が6センチの立方体だ。ウッドワードによると、エンジンをより効率的にすることで推進力を向上することが可能で、宇宙船の内部や周囲に必要な数だけ積むことができるという。

太陽系の外にも行ける画期的技術


マッハ効果を使ったロケットは、究極のEVとも呼べる電動の宇宙船を実現し、太陽系の外まで飛行することが可能になる。将来的には、原子力発電を用いることになるだろう。

ウッドワードによると、まず衛星での利用が考えられるという。現状、衛星は化学ロケットで軌道を周回したり、アラインメントを補正している。電気で推進するロケットエンジンを使えば、衛星の寿命を大幅に伸ばすことが可能になる上、これまでのように大きなパワーやスケールアップが必要なくなる。必要な電力は、ソーラーパネルが供給してくれる。
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編集=上田裕資

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