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2021.02.09 16:00

災害に強い社会に貢献。100億円調達の次世代型電力網

Forbes JAPAN編集部
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VPP JAPAN 代表取締役 秋田智一

『Forbes JAPAN』が毎年、優れたスタートアップ200社を掲載している「日本のスタートアップ大図鑑」。スタートアップ新世代の躍動が話題となった2020年。なかでも、注目する企業6社を紹介する。その1社が、オフグリット電力サービスのVPP JAPANだ。


2020年、100億円の大型調達を果たしたのがVPP JAPANだ。同社は、スーパーや物流施設の屋根に無償で太陽光発電設備を設置し、発電した電力を通常の送配電系統の電気よりも安い価格で販売する。現在、全国約100施設で20MWが稼働。21年に100MW、24年に250MW導入を目指す。

代表取締役の秋田智一は、異業種の広告会社出身。2009年にVPP Japanの親会社に入社し、マーケティングの知識を活かして電力小売り事業への新規参入などを担当。スーパーを代理店にして事業を拡大した。

「分散型の再生可能エネルギーの普及に賭けたい」。そう決心したのは、東日本大震災の被害を目の当たりにしたときだ。従来型の電力システムは効率的だが、災害などで被害がでれば広域で影響を受ける。分散自立型の発電所が身近な場所にもあれば、災害に強い社会に貢献できると考えた。

業界から見れば100億円は大きな金額ではない。1000MWを発電する大型火力発電所の建設費は1000億円以上。VPPは1MWの発電に5〜6カ所も必要だ。「電気的価値だけなら従来型のほうがはるかに効率的です。それでも挑むのは、『脱炭素時代の新しい電力の仕組みを我々がつくっていくんだ』という思いがあるからです」

あきた・ともかず◎1976年、愛知県生まれ。広告会社を経て、2009年にVPP JAPANの親会社である現アイ・グリッド・ソリューションズに入社。17年にVPP JAPAN設立。

text by Michiko Nariai, photograph by Shunishi Oda, Retouch by Shinji Uezumi

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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