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2020.07.20 18:30

問題山積 ソフトバンクが提携する米エネルギー企業の実態

Forbes JAPAN編集部
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ブルームの技術力は向上しているが、1kWh当たり2セントで供給できるようになるまでの道のりは遠い。これまでに積み上げてきた累積損失は27億ドル超。19年も9月までに、売上高6億6800万ドルに対して1億9500万ドルの純損失を計上している。現状では、デラウェア州など高額で契約している顧客が、その損失の穴埋めをする形になっている。

それでも、ブルームの技術は少なくとも平均的な発電所よりクリーンなはずだ。ボックスは、メタン燃料の約65%近くを電力に変換、1MWh当たりの二酸化炭素排出量は約308kgだ。19年半ばの米国の電力部門全体の二酸化炭素排出量との比較では、火力、石炭ともにブルームを下回るところはない。

ただしそれも、ボックスが新しく最適な発電効率で稼働しているときの話だ。燃料電池が古くなるにつれ、電気化学処理の効率は劣化する。フォーブスの試算によれば、最も古いボックスの一部では、二酸化炭素排出量は1MWh当たり約435㎏。一方、カリフォルニアの公益事業者であるPG&Eの二酸化炭素排出量が1MWh当たり約95kgとなっており、ブルームは大きく見劣りする。

有害廃棄物の問題もある。営業許可申請時には「有害廃棄物は発生しない」としていたが、後に規制当局の追求で自社のろ過システムにヒ素やベンゼン、硫黄、鉛など数多くの有害物質が残留することを認めた。米環境保護庁(EPA)からの指導で脱硫装置の取り扱いを変更し、現在は同庁の規制に準拠していると言うが、EPAは現在も、ブルームから100万ドルの罰金を徴収しようとしている。

さらに山積する問題


実はブルームは、これまで17億ドルにも上る出資を受けていながらいまだに黒字を計上したことがない。しかも、資金の一部は虚偽の情報によって調達されたもの。そのため、投資家や顧客との間のもめ事も絶えない。さらに、うまみの大きい税額控除が段階的に廃止されようとしており、資金繰りの手段が尽きつつある。同社は間もなく成長コースから外れるかもしれない。シュリダーはすでに、投資銀行の「ジェフリーズ」に助けを求め、今年末に返済期限を迎える3億ドル超の負債の返済を繰り延べしようとしている。


米国の著名なベンチャー・キャピタリストであり、ベンチャーキャピタル「クライナー・パーキンス」の共同創業者の一人、ジョン・ドーア(中央・右)は、ブルーム・エナジー創業初期からの投資家で、取締役会役員。長年にわたりシュリダー(同・左)をサポートしている。ブルームの取締役会には、2001年からのブッシュ政権で国務長官を務めたコリン・パウエルも名を連ねる

18年7月にはIPO(新規株式公開)を行い、2億8200万ドルを調達したが、その後、同社の株価は50%近く下落している。そしていま、規制当局だけでなく地方の政治家たちまでが、ブルームと相反する立場をとるようになっている。カリフォルニア州バークレーなどの都市では、天然ガスの使用に対し、“グリーンさが足りない”として反対に転じている。例えば、シリコンバレーの中心部であるサンタクララ郡は、家畜の糞尿や埋め立てゴミから出た途方もなく高価な「バイオガス」を燃料として使用しない限り、ブルーム製品の新規設置を禁じようとしたのだ。裁判所は最近になって、この動きを阻止する判決を下してはいるが。
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文=クリストファー・ヘルマン 写真=ティム・パネル 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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