経済・社会

2020.06.21 09:00

アフターコロナに求められる「ブルーエコノミー」の回復 海洋観光から養殖まで

督 あかり
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2. 輸送による排出の削減


海上輸送は地球上の貨物の90%を運んでいると推定され、これが炭素を始めとする大気汚染物質の世界的な排出の大きな割合を占めています。 国際海事機関は、海運による排出量を2020年までに50%削減することを義務付けています。新型コロナウイルスの大流行により輸送活動が減ることは、この目標に向けて前進する貴重な機会でもあります。

運用を停止している船には燃料効率を高め、排出量を削減するための改修を加えることができ、活動の少なくなっている造船所は、今後ゼロエミッションが求められるようになった時のために、設備を刷新し政府支援を確保することもできます。

このようなチャンスが最も大きいのは、中国、韓国そして日本を合わせて世界の造船量の95%以上を占めているアジア。海上輸送の脱炭素化を加速させるための支援のひとつとして、港を電化しゼロエミッション燃料を提供できるようにすることも必要です。

海上輸送
新型コロナウイルスの流行により海上輸送の脱炭素化は進むのか(Getty Images)

3. ポストコロナの乱獲回避


他の投資とは異なり、海洋生物資源は低迷期においても成長します。第二次世界大戦中にも、多くの漁船が漁の中止を余儀なくされ、その間にタラなどの魚の数が増えました。新型コロナウイルスのパンデミックが同様の事態をもたらしたとしても、すぐに乱獲しようとするのではなく、水産学の知見を使い、新型コロナウイルスの功名による長期的なメリットを最大化するインテリジェントな漁獲調整をする必要があります。

魚市場
ロックダウンにより恩恵を受けている漁業資源も(Getty Images)

4. 海の宅配トラック運転手・船員へのサポート


パンデミック下において、船は最も困難な労働環境であることは間違いないでしょう。海運業や漁業に従事し、高い感染リスクにさらされる船員たちは、社会の機能に不可欠な存在です。

彼らはブルーエコノミーにおいて食料品店店員や配達員のようなもの。これらの部門を強化するには、乗組員にウイルス検査や抗体検査を提供し、1カ月以上の船旅に出た後には尊厳を持って安全に帰宅できるようにすることが必要です。また、乗組員には彼らと家族をつなぐ安全な通信チャネルも提供すべきです。漁業においては、通信の強化は海での過酷な作業に立ち向かうための力となります。

船乗り
社会機能への船員の貢献に今こそ注目を(Getty Images)
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文=Douglas McCauley、Kristian Teleki、Gloria Fluxà Thienemann

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