「グリーンニューディール」に期待広がるアメリカ。ポストコロナ経済対策となるか

グリーンニューディール政策を訴えるアレクサンドリア・オカシオ゠コルテス議員(Getty Images)


コロナ危機で注目「今こそグリーンニューディールにふさわしい時」


しかし、コロナ危機によってリーマンショックを超える経済的被害が出ていると言われ、政府による経済刺激策に注目が集まる中、財政赤字への世の中の見方も変わりつつある。

ジャーナリストのケン・シルバースタインはフォーブスに「今こそグリーンニューディールにふさわしい時かもしれません」と述べ、「共和党員たちはもはや、経済刺激策に反対することはできません。議論すべきなのは、公的資金をどこに投入するかということだけなのです」と語る。

「今、経済刺激策に注目が集まっていますが、これは市場を落ち着かせ、市場の信頼を高めるのと同時に、グリーンエネルギー経済を加速させる現実的な機会なのです」

「ニューディール」とはもともと、ポーカーなどのトランプ遊びで「親」がカードを配り、新たなゲームが始まる際に使われる言葉だ。2030年までに気温が1.5℃上昇すると予測され、悲惨な結末を避けるには大変革が必要だと叫ばれる現在、グリーンニューディールは積極的に追求されるべき政策の一つだろう。

オバマ政権時には国務長官も務めたジョン・ケリーはニューヨークタイムスに、パンデミックは、科学者が警告する気候変動のような脅威に対して、政府は前もってきちんと準備しなければならないということをアメリカ人に意識させたと語る。

「コロナウイルスによって真の対話の可能性へと扉が開かれたと思います。今回、人々は科学者の話を聞かなかった場合の困難を学んだのですから」

環境問題の論客として知られるアル・ゴア元米副大統領も、アメリカのテレビ局HBOの番組に出演した際、コロナ問題と地球温暖化問題には明確な共通点があると述べ、今回の一件は「政府の指導者たちは科学者からの警告を単に却下することはできないという呼びかけとして機能した」と述べた。


アル・ゴア元副大統領。コロナ問題と地球温暖化には明確な共通点があると指摘した。(Getty Images)

ドナルド・トランプ大統領は5月13日、新型コロナウイルス対策の早過ぎる制限解除に警鐘を鳴らした米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士の発言について、「受け入れられない」と述べた。アメリカでは新型コロナウイルスに140万人近くがかかり、約8万4000人が亡くなっている現状があるが、それによって経済は大きな打撃を受け、失業率は14.7%と、1982年11月の10.8%を大きく上回り、戦後最悪となっている。

「環境と経済」2つの危機に立ち向かう


新型コロナウイルスの世界的流行の思いがけぬ結果として、多くの地域で社会経済活動がストップしたことにより、大気汚染物質の濃度が下がったことが現場観測や人工衛星からの観測によって把握されている。

しかし、コロナショックによる世界的な景気後退は、長期的に見れば気候変動対策に大きな影を落としかねない。「環境か、経済か」という選択を迫ることによって、どちらかを後回しにすることはできない状況だ。新型コロナと環境問題、2つの危機に同時に立ち向かう経済政策を考える必要がある。

「神は常に赦される。人はある時は赦し、ある時は赦さない。自然は決して赦さない。わたしたちが地球を荒廃させたなら、その答えはひどいものでしょう」

これは今年50周年を迎えた4月22日の「アースデイ」に、フランシスコ教皇が述べた言葉だ。グリーンニューディールを「非現実的だ」として退け、科学の警告を無視し、大変革への挑戦を冷笑することは、単に将来的にやってくる悲惨な結末に対応するためのコストを先送りにしているにすぎない。

コロナショックを機に、グリーンニューディールが活発に議論されることを期待したい。

文=渡邊雄介

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