ビジネス

2020.04.24

「税金亡命者」の大富豪ブランソン、政府に巨額の援助求める

photo by Don Arnold/WireImage

英大富豪リチャード・ブランソンの帝国が、崩壊の危機にある。ブランソンは既に、自身の航空会社ヴァージン・アトランティックを守るため、個人所有する島を担保に出すと表明した。

ブランソンは英豪両国の政府に対し緊急資金援助を求めている。新型コロナウイルスの流行により人々が旅客機を利用なくなったことで、他国の航空業界などと同様、世界を股にかけたブランソン帝国も、多額の損失を被っている。ヴァージン・オーストラリアは既に経営破綻した。

ブランソンは事業存続のために自身の保有資産から約2億5000万ドル(約270億円)を既に投じたと報じられている。経済が受けた打撃は新型コロナウイルスの流行自体に匹敵するほど深刻で、さまざまなセクターに悪影響を及ぼしている。

ブランソンは、約42億ドル(約4500億円)の保有資産は自身の企業に投資されているため、巨大なビジネス帝国を生かしておく十分な現金があるわけではないと説明している。

ブランソンはヴァージンの従業員に向けた公開書簡で、「私は50年実業界にいるが、これは私たちが今まで経験した中で最も厳しい時だ。このパンデミック(世界的大流行)が世界の非常に多くのコミュニティーや企業、人々にどれほど破壊的な影響を与えているかは、筆舌に尽くしがたい」と表明。

さらに、「私の総資産について多くのことが言われているが、それはこの危機が起きる前の世界中のヴァージン事業の価値に基づいて計算されたもので、銀行口座に現金として眠っていてすぐに引き出せるものではない。長年の間、ヴァージン・グループから大きな利益が引き出されたことは一度もなく、出た利益は価値や機会を生む事業の構築に再投資されてきた」と続けた。

「この前例なき危機の現実として、世界の多くの航空会社が政府の支援を必要としていて、多くの企業が既にそれを受けている。支援がなければ競争はなくなり、今後さらに数十万の雇用が失われ、重要な交通手段と大きな経済価値もなくなる」

ただ、ブランソンは居住地を英国外のネッカー島に置いており、英国の所得税を支払っていないことは指摘しておくべきだろう。ブランソンは「税金亡命者」を自称し、英国外に拠点を置くことで巨額を節約している上、ジェット機で各地を飛び回り楽しみに興じる派手なライフスタイルで知られている。

米英豪の3カ国で、億万長者が政府に事業救済を求めていることには当惑を感じる。資本主義社会では、企業は破綻する。冷たく聞こえるかもしれないが、それが現実だ。人は起業時には大きな成功を望むものの、データからは大部分の企業が破綻することが分かっている。欧米諸国ではなぜか、景気が良いときは誰もが資本主義者なのに、経営がうまく行かなくなると企業社会主義に頼るようになる。
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編集=遠藤宗生

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