ビジネス

2020.03.05 07:00

Kickstarterを産んだ「パンクロック精神」──既存の評価システムはフェアじゃない

新國 翔大

アドラーたちが2009年にKickstaterをスタートした時、背景にあったのは「何かがおかしくないか?」という大人社会への疑問だ。1980年代のアメリカーーニューヨークの「裏側」のコネティカットで育ったアドラーは、パンクロック、スケートボードなどサブカルチャーの中で、「ありとあらゆるものが完全を求めるようになった。デザインやクリエイティブの世界ですら、産業化が起こっていると感じていた」と振り返る。

例として、「007」「ダイ・ハード」など、1つの作品が成功すると同じアイデアをシリーズ化する映画産業を挙げる。


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それは、新しいアイデアが評価されにくい、新しいアイディアを持った人が業界に入りにくいという状況を生んでいた。「周囲のミュージシャンやアーティストは、どうやれば認められるのかという課題を抱えていた。どうやって自分の作品を見てもらい、認められるか──システムが自分たちに有利なものではないと感じていた」。“フェアじゃない”という大人社会への反発から、Kickstarterは始まったのだ。

Kickstarterから生まれた数多くのプロジェクト


実際、最初のプロジェクトは「Drawing for Dollars」というアートプロジェクトだった。プロジェクトを始めたdarkponyは絵がなかなか終わらないことに苛立ち、誰かが資金を払ってくれているというインセンティブを求めてKickstarterのメカニズムを利用することにした。完成させるための資金をと募ったところ、20ドルの目標額に対して35ドルが集まった。

ミュージシャンのAllison Weissは、EP製作にあたって2000ドルを調達しようとした。アドラーたちは「クレイジー。うまくいかないだろうと思った」ところ、あっという間に2000ドルに達した。Weissは自分のオーディエンスに自分のキャンペーンを告知するという手法を取ったが、最終的に7711ドルに集まった。
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文・写真=末岡洋子

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