副業と転職が当たり前の時代において、企業は採用にどう向き合うべきか?

HERPの庄田一郎とYOUTRUSTの岩崎由夏



HERPの庄田一郎

優秀な人ほど、会社を辞めるモチベーションになってない


岩崎:私はサービスの特性上、求職者サイドの声を聞くことが多いのですが、副業している人の多くはお小遣い稼ぎよりは、自身のキャリアのために楽しみながらやっている。その結果、副業先の仕事が楽しくなり、転職するケースも増えてきています。

本当に優秀な人ほど「今にも転職してやる!」と思っていなくて。彼らは面白い仕事をもらっていて、それなりに待遇も良く、今すぐ辞めるほどのモチベーションにはなっていないんですよね。だからこそ、本当に優秀な人を採用したいのであれば、転職活動してない人たちと接点を持ち、アプローチしていくしかないと思います。

庄田:日本はロイヤリティ至上主義のようなところがあり、企業に忠誠を誓って定年まで勤め上げることが「美徳」とされています。個人的にそれは日本人の真面目さやコミットメントにつながる良さのひとつだと思うので、その点を残しつつ企業と候補者がお互いに心地よい体験を築いていくべきなのだと思います。候補者が転職活動を隠れてやらなければいけない風潮があるのは、何があっても企業に忠誠を誓わないといけないと彼らが思っているからです。今まで縦型だった個人と企業の関係性が、少しずつ横型になり対等でフラットになっているからこそ、企業側も考えを変えていくべきだと思います。

考えを変えられない企業は時代の変化に対応できないでしょうし、考え方が変わった個人と企業の間を気持ちよく繋ぐのが僕たちの役目。僕らは企業側に体験を提供する立場なので、さまざまなサービスとの連携を通してより気持ちの良い体験をつくっていけたらと思います。

岩崎:海外の企業では候補者を採用して、入社後にスキルやカルチャー面でフィットしなかったら解雇して終わり。そもそも日本の企業には「お試し」という概念がないのですが、正社員を海外のように簡単に解雇できるわけではありませんし、長く勤める文化も根強くあるのでフィットしない可能性のある人材を受け入れらません。その一方で、自社にフィットする人材においては落としてはいけないので、他国と比べても選考そのものがかなり重要だと考えています。だからこそ、“お試し就職”やHERP Nurtureのようなツールがないと、労働人口が減っていく中で採用する企業側は厳しい状況に陥るばかりです。

庄田:僕は2015年にリクルートを退職した後、実は“お試し就職”をしたことがあるんです。2カ月ほどフリーランスとして活動していて、業務委託で5社の採用活動支援に関わっていました。リクルート退職直後のタイミングでエウレカへの入社を一度検討した時期があり、エウレカという企業と出会ってまだまもないのに面接だけで入社を決めるべきなのかどうかと悩んでいたことがあります。
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構成=新國翔大 写真=小田駿一

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